先週の日経平均は直近安値を下回らず改善へ
先週末5月20日(金)の日経平均株価は2万6,739円で取引を終えました。前週末終値(2万6,427円)からは312円高、週足ベースでも反発に転じましたが、直近の3週間は反発と反落を繰り返しています。
図1 日経平均(日足)とMACD (2022年5月20日取引終了時点)
改めて、先週の日経平均の値動きを上の図1で振り返ると、前週末からの株価反発の流れが継続し、18日(水)までに4日続伸したかと思えば、翌19日(木)には急反落、そして週末の20日(金)に反発して終えるといった展開でした。冒頭では週足ベースで上げ下げを繰り返していると述べましたが、先週は日々の値動きもやや慌ただしいものとなりました。
ただ、こうした慌ただしさの割には、全体的に堅調な推移だったといえます。
ちょうど図1のピンク色の丸枠で囲われた部分が先週の株価の足取りなのですが、25日と75日の2本の移動平均線が意識されていたことや、2万6,000円から2万7,000円の範囲内に収まっていること、そして、NYダウ(ダウ工業株30種平均)やS&P500(S&P500種指数)といった米株価指数が年初来安値を更新していた中でも、日経平均は5月12日の直近安値を下回りませんでした。
さらに、下段のMACDもシグナルを上抜けていることを踏まえると、チャートの形状は何だかんだで改善しています。
また、ここ最近の日経平均の日足チャートを、下の図2でパターン分析(ざっくりとした形状で把握する分析)を行うと、いわゆる「上昇フラッグ」を形成しているようにも見えます。
図2 日経平均(日足)の動き(2022年5月20日取引終了時点)
「フラッグ」とはその言葉の通り、株価が一定のレンジ内で上げ下げを繰り返しながら、旗のような形状を描いていく状況を指します。上の図2を見ると、3月25日から下落トレンドが始まったことが確認できますが、株価の値動きが一定の範囲内で上げ下げしていることが分かります。
フラッグの形状が右肩下がりのため、見た目の第一印象はあまり強そうに見えないのですが、「上昇フラッグ」と名付けられているように、このパターンはその後の株価が上昇することが多いとされています。仮にこのまま上昇していった場合、旗の支柱の部分にあたる3月9日から25日の上昇幅が上値の目安となります。
具体的に計算していくと、直近でフラッグの下限の線にタッチした5月12日の安値(2万5,688円)から、3月9日から25日の上昇幅(3,657円)を加えた2万9,345円までの上昇が見込まれるということになります。
もちろん、まだまだフラッグの形成が続くのであれば、次に株価がフラッグの下限の線にタッチしたところから3,657円を加えた株価が目標値となりますし、現在の相場地合いやムードは決して強いとはいえず、スムーズに2万9,000円台まで上昇できるイメージも描きにくいと思われます。
したがって、株価が上昇した場合の目先の目標値についても考えておく必要があります。
NYダウは約90年ぶりの8週連続下落
図3 米NYダウ(日足)とMACD (2022年5月20日取引終了時点)
まずは、米国株市場の動向から確認します。先週末20日(金)の米NYダウ終値は3万1,261ドルとなりました。先週のNYダウは週初こそ戻り基調を描いていたものの、その後は年初来安値を更新するなど、軟調な場面が目立ちました。週足ベースでも約90年ぶりの8週連続下落という記録を作っています。
上の図3でここ最近のNYダウの値動きをチェックすると、前回のレポートでも触れた通り、株式市場はひとまず米金融政策の引き締め自体は織り込んだと考えて良いものの、現在の相場の視点は景況感の悪化への警戒を探っている状況になっていると思われます。
実際に、先週の米株市場は、週の前半に発表された経済指標(4月の小売売上高・鉱工業生産)を好感して株価を戻す動きだったものの、その後の米小売大手企業のさえない決算が相次いだことで下落に転じるなど、景況感の楽観と警戒で揺れ動いていました。
前回のレポートでも指摘した通り、これまでのNYダウは米金融政策の引き締めを織り込む過程で3万3,000ドルがリスクのオンとオフの境界線として機能してきましたが、今後はその先にある景況感の悪化警戒を織り込む過程で3万2,000ドルが境界線となるという見方は前回から変化はなさそうです。
今週の米国では、ベスト・バイやコストコホールセール、ダラー・ゼネラルといった米小売関連企業の決算が予定されているほか、4月の個人所得やPCE(個人消費支出)といった経済指標の発表も控えています。
また、同じく決算が予定されている半導体関連のエヌビディアの動向や、4月の経済指標が大きく悪化する一方、ロックダウンの緩和観測やプライムレート金利の引き下げなどによって、好悪の材料が相殺(そうさい)される格好で今のところ落ち着いている中国株市場が、再び景気後退懸念を強めることも考えられるため、注意しておきたいところです。
その中国では今週、美団点評(メイトゥアン・ディエンピン)や拼多多(ピンドゥオドゥオ)、網易(ネットイース)といったIT企業や、EV関連企業の小鵬汽車(シャオペン)などの決算が予定されています。
そのため、今週の米株市場がさらに景気後退リスクを織り込んで下値をトライするのか、それとも材料出尽くしで底入れするのかなど、「景気後退リスク」の取り扱いが焦点になり、日本株の浮沈のカギを握りそうです。
今週の日経平均、早期の回復基調実現が焦点
図4 日経平均(日足)のフィボナッチ・リトレースメント(2022年5月20日取引終了時点)
となると、先ほどの「上昇フラッグ」のところで想定した日経平均2万9,345円までの株価上昇は一筋縄ではいかなそうな印象を受けます。そこで、最後に目先の株価の戻りの目安を、フィボナッチ・リトレースメントをベースに探っていきたいと思います。
上の図4は、昨年9月14日の高値から今年3月19日の安値の下げ幅に対する、株価の「戻し」の目安をフィボナッチ・リトレースメントで描いたものです。
すると、3月19日に底を打った日経平均は一気に「61.8%戻し」まで上昇した後に下落に転じ、再び上昇した際には「50%戻し」、その後は「38.2%戻し」と次第に戻り高値の水準を引き下げていることが分かります。
そのため、今後の株価の反発は38.2%戻し(2万7,017円)トライからスタートすることになります。そして、次には図4の上値ライン(紫色の線)が控えています。この上値ラインは、9月14日からの戻り高値がほぼ一直線上に結ばれているため、上値の抵抗線として強く意識されており、株価が本格的に上昇していくには、この上値ラインの突破が最大のハードルとなります。
仮に、上値ラインを超えることができれば、さらなる株高に弾みがつく可能性が高まります。ちなみに、76.4%戻しの株価(2万9,352円)は、上昇フラッグで想定した株価(2万9,345円)とほぼ同じ水準です。
したがって、今週は早い段階で2万7,000円台を回復し、株高基調を強めることができるかが試される週になりそうです。
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