今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい金融商品」および「今後、投資してみたい国(地域)」で、「特になし」を選択した人の割合に注目します。

 質問「今後、投資してみたい金融商品」の選択肢は、国内株式、外国株式、投資信託、ETF、REIT、国内債券、海外債券、FX(外国為替証拠金取引)、金やプラチナ地金、原油先物、その他の商品先物、金先物取引、特になしの13個です(複数選択可)。

 また、質問「今後、投資してみたい国(地域)」の選択肢は、日本、アメリカ、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になしの13個です(複数選択可)。

図:「特になし」を選択した人の割合

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2022年4月の調査において、「今後、投資してみたい金融商品」で「特になし」を選択した人の割合は8.46%、「今後、投資してみたい国(地域)」で「特になし」を選択した人の割合は8.05%でした。では、「特になし」の割合は、どのような時に変動するのでしょうか。

 上図のとおり、英国のEU離脱の是非を問う国民投票で離脱が決定した直後(2016年6月)、世界同時株安時(2018年12月)、新型コロナパンデミック化宣言直後(2020年3月)に、「特になし」を選択した人の割合が高くなりました。

 逆に、2020年前半から2021年後半にかけて、米国株が騰勢を強めた時期に、「特になし」を選択した人の割合が低下しました。

 これらをもとに考えると、「特になし」の割合が高くなるのは、世界に強い不安が充満し、今後投資してみたい金融商品や国(地域)を探すことが難しい時、「特になし」の割合が低くなるのは、株価上昇によって楽観的なムードが充満し、今後投資してみたい金融商品や国(地域)を探す動きが活発化する時、と言えます。

「特になし」の割合は、不安ムード拡大時に高くなり、楽観ムード拡大時に低下する傾向があるわけです。「特になし」の割合は、投資家の皆さまの心理状態が、「不安」なのか「楽観」なのかを示す指標と言えるでしょう。

 では足元、「特になし」はどのように推移しているのでしょうか。2022年1月の調査を底とし、2月、3月、4月と、月を追うごとに高くなってきています。4月は「今後、投資してみたい金融商品」、「今後、投資してみたい国(地域)」ともに、2021年11月を上回り、2020年後半の水準に達しました。

 2020年後半というと、まだ新型コロナのワクチンが完成していなかったり、トランプ氏とバイデン氏が次期米大統領の座を巡り、ののしり合いながら舌戦を繰り広げていたりした、世界全体が不安定だった時期です。

 今後、「特になし」の割合が高くなるか低くなるかは、投資家の皆さまの心理状態が「不安」なのか「楽観」なのか、どちらに振れるか次第ですが、「ウクライナ情勢」「米国の金融政策」「中国コロナ再拡大」など、不安が尽きない情勢が続いていることを考えれば、目先は、まだ「特になし」の割合が高くなる可能性はあるのかもしれません。

 引き続き、「今後投資してみたい金融商品」「今後投資してみたい国(地域)」における「特になし」の動向に、注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2022年4月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2022年4月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成