GW最終日に日本株上昇、そのわけは?

 6日(金)の日本株上昇の理由として、連休谷間の需給調整(今週は国内企業の決算ラッシュや週末にオプション・ミニ先物SQが控えている)や、原油価格・円安メリットなど「買える」銘柄の存在、そして、一部で「岸田砲」とも呼ばれている、岸田首相がロンドンで5日(木)に行った演説の影響などが考えられます。

 とりわけ、「Invest in Kishida(岸田に投資)」と呼びかけた岸田首相の演説では、「新しい資本主義」の4本柱(人材育成、技術革新、スタートアップ、環境・デジタル化)の強化をはじめ、「資産所得倍増プラン」(貯蓄から投資へ、兼業・副業)の推進、新型コロナウイルスの水際対策緩和、原発の再稼働に前向きな姿勢などが語られました。

 6日(金)の取引では、電力株やインバウンド関連株などが物色されていたこともあり、少なからず岸田首相の演説の影響が出ていたことがうかがえます。

 また、インバウンドについては足元の円安傾向も追い風となりますが、ただ、目先の物色はまだ限定的であるほか、岸田首相といえば、これまで金融所得課税の税率引き上げ検討など、投資に対してネガティブな印象が強かったこともあり、今回の演説をきっかけに本格的な「日本買い」の狼煙になったと言い切るにはもう少し見極めが必要かもしれません。

 仮に、日本株に対する期待を先取りする動きとなれば、図1にあるような移動平均線や上値ラインなどを突破して上昇に弾みがつくことも考えられます。

 もちろん、他の相場材料に視点を向けると、「アフターFOMC」がイベント通過によるアク抜け感とはならずに市場のムードが揺れ動いている状況が続いてしまっているため、素直に企業業績や見通しを織り込みながら方向感を探るという展開が想定しにくくなっていることや、企業業績自体についても、円安進行や原材料価格の高騰、「ゼロコロナ政策」を実施している中国の供給網の混乱などによる業績への影響を企業がどう捉えているのかも焦点となっています。

 実際に、日経平均のトレンドの方向性やボラティリティの高さは変わっておらず、株価の底打ちが、下値をトライして達成するのか、それとも時間を掛けて上下しながら形成していくのかが見通しづらく、不安定な相場地合いが続きそうです(下の図3と図4)。

図3 日経平均(日足)とRSI (2022年5月6日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 日経平均とRSI(相対力指数)の推移をたどると、「トレンド転換型」(水色の矢印)と、「トレンド継続型」(緑色の矢印)の逆行現象が複雑に絡み合っている状態が続いています。

 足元ではトレンド転換型の逆行現象が出現したことにより、短期的に上向きの動きとなっていますが、中期的には下向きトレンド継続型の影響が強いため、株価の戻りが限定的にとどまる、もしくは上昇後の株価下落が大きくなる展開には注意が必要です。

図4 日経平均75日移動平均線乖離率のボリンジャーバンド (2022年5月6日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡデータを元に筆者作成

 また、75日移動平均線乖離(かいり)率のボリンジャーバンドを見ても、バンドの幅が広い状況を保っていて、株価のボラティリティが大きい状況が続いています。

 そのため、値動きが荒い展開も想定しておく必要があります。具体的な想定レンジは、前回のレポートと同様に上値がプラス2σ(シグマ)、下値がマイナス5%乖離あたりとなりそうです。

 これを6日(金)時点の75日移動平均線の値(2万7,035円)にあてはめて計算すると、2万5,683~2万8,021円となります。