「露中北」の東アジアにおける役割分担

 3月4週目の動きを振り返れば、共通の敵「米国」の存在が、「露中北」の連携を強めていると言えるでしょう。米国がロシア制裁を強めたことをきっかけに、ロシアと米国の関係がこれまで以上に悪化。この流れが中国と米国、北朝鮮と米国の関係悪化を加速させ、共通の敵と対峙(たいじ)する「露中北」の連携強化が進んだ可能性があります。

 連携の中身は、以下のとおりだと、筆者は考えています。ロシアは、巨大消費国である中国へエネルギーや金属、食糧などの資源を供給する。中国はその見返りに、高度化した各種製品をロシアに提供したり、ロシア産の各種資源を世界に供給する販売役を担ったりする。

 北朝鮮は、いつでも武力行使ができることをアピールし、米国や同盟国を威嚇し続ける。ロシアは、米国が指摘するとおり、北朝鮮に弾道ミサイル開発に関わる技術を供与し、威嚇行為をほう助している可能性あり。

図:東アジア「露中北」の役割

出所:筆者作成

 こうした連携が機能すれば、ロシアは国際的な金融・貿易の枠組みから排除されたとしても、中国から物資を入手したり、中国を経由して自国の資源を世界に販売したりすることができます(この3国は陸続きゆえ、地下にトンネルを掘ってしまえば、衛星で物資の往来を把握することは困難)。

 また、ロシアと中国は、北朝鮮との対話の窓口という重要な立場にあることをアピールすることで、国際社会から完全に排除されることを回避できます。その他、3国いずれも「核保有国」である点も「同じ穴の狢(むじな)」的な要素で、連携を強化する動機となったと考えられます。

 岸田総理大臣は3月27日(日)、「力による一方的な現状変更を東アジアで決して許してはならない」と、述べました。主要メディアでは、この発言は中国を念頭に置いているとされていますが、筆者は3月4週目で見られた上記のような「露中北」の急速な連携強化を意識した発言だったとみています。

 岸田総理は上記のほか、「事態の展開次第では戦後最大の危機を迎えることになる」と発言しました。事態の深刻さが増していることがうかがえます。