東西ロシアでリスク拡大、短期決戦はニセ情報?

 先週、米大手経済紙は「ロシア軍が目指した数日間での勝利は、まぼろしに終わった」と報じました(Wall Street Journal 3月22日)。当該記事は、ロシア軍の当初の目標が「短期間でウクライナを制圧すること」だったと、述べています。

 また、3月16日(水)のバイデン米大統領の演説では、「長く困難な戦いになる」との発言がありました。こうした記事・発言は、ウクライナ危機が、長期化する可能性があることを示唆しています。

 長期化した「ウクライナ危機」の延長線上に、「東アジアにおける露中北(ロシア、中国、北朝鮮)の台頭」があると筆者は考えています。逆に言えば、ウクライナ危機は「露中北」の台頭を企図して始まったものだった可能性すらある、ということです。

図:東西ロシアと北朝鮮、中国に関わるリスク

出所:筆者作成

 3月4週目(20~26日)の「露中北」の連携強化をうかがわせる動きは、非常に迅速でした。ウクライナ危機が長期化する可能性が浮上したタイミングで、連携強化が迅速に進んだ(危機長期化示唆が露中北の連携強化のきっかけとなった)のであれば、ウクライナ侵攻の動機の一つに「東アジアにおける露中北の台頭」が含まれていた可能性が浮上します。

 足元、メディアでは「東アジア」というキーワードが増え始めています(「北東アジア」を含む)。リスクが存在するのはウクライナだけではないこと(ロシアが東西で軍事色を強めていること、それと歩調を合わせる国が出現しつつあること)が鮮明になってきたことの証と言えるでしょう。以下は、3月の4週目(20~26日)に報じられた、ロシア、中国、北朝鮮の主な動向です。

・ロシア
 21日(月):日本との平和条約締結交渉を中断すると発表。日本が、欧米が主導するロシア制裁(排除・不買・撤退)に加担していることへの報復である模様。

 22日(火):ロシアのラブロフ外相は、米国が中ロに制裁圧力をかけるのは「賢明でない」と非難。貿易における決済時の通貨を米ドルから自国通貨(ルーブル)への切り替えを進め、制裁リスクに対抗する必要性を強調。

 25日(金)、同国東部のクリール諸島(北方領土と千島列島)で、軍事演習を実施(3千人規模)。同日、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行ったことを受け、中国と緊密に連携することを確認。

・北朝鮮
 24日(木):新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」を発射。米国の全域が射程に入る可能性あり。後に新型ではなかった可能性があると報じられたものの、この実験は米国を強くけん制する意図があった模様(これに対し、米国は24日(木)、ミサイル開発に関わる技術を供与したロシアと北朝鮮の企業・個人に制裁を科すと発表)。

・中国
 22日(火)・23日(水)、ロシアの外相を招き、会談。王毅(ワン・イー)国務委員兼外相と、ラブロフ外相は、米国の内政干渉や、欧米主要国が主導して行う枠組み作成に反対する姿勢を確認。

 22日(火)、習近平国家主席が、北朝鮮の金正恩総書記に、新しい情勢の下で協力し、中朝関係を発展させていきたいという趣旨のメッセージを伝えた。また、ロシアや北朝鮮に加えた計17の国・地域とともに内政不干渉の原則などを掲げる「国連憲章」の堅持を名目にグループを発足させる計画を明らかにした。

図:3月4週目の「露中北」の主な動向

出所:各種情報源をもとに筆者作成