今後の米中関係と中国株の支援材料

 今後の見通しについてですが、まず、米中関係が気になります。

 そもそも中国は、大きな原則に基づき、政治、外交を行っています。王毅外相は3月7日、全人代第5回会議による記者会見でロシアとの関係性について質問を受け、次のように答えています。「中国とロシアとの関係は、独立した自主の価値観を有し、同盟を結ばず、対抗せず、第三者に対しないといった基礎の上に成り立っており、第三者の干渉や挑発は決して受け入れない」と発言しています。

 日本ではほとんど報道されていませんが、外交部定例記者会見では、米国による過去の侵略行為から生物兵器開発の疑惑まで、激しく米国を批判しています。

 もちろん、中国は今後もできる限り米国からの制裁を避けようとするでしょうし、制裁を受けたとしても米国の憤りに油を注ぐような制裁返しをあからさまにしたりすることはないでしょう。しかし、米国が何をしようが、中国がロシアとの通常通りの取引を止めることはないとみています。その点はリスクとして意識しておいた方がよいかもしれません。

 ただ、制裁には副作用が伴います。たとえば、ロシアをSWIFT(国際銀行間通信協会)から除外、中央銀行の資産を凍結した件では、一部の国に対して改めてドル依存によるリスクの高さを印象付けました。

 ロシアはルーブル・人民元間の相互取引の強化を検討し、インドはロシア、中国との通貨協力を模索しています。長い期間、親米国であったサウジアラビアですが、中国への石油販売に関して人民元を使うことを検討しています。

 2020年におけるロシアの経済規模は韓国に次ぎ第11位で、中国の10%に過ぎません。中国の経済規模は世界第2位ですが、製造業に限れば米国の1.7倍もあります。しかも、米国側からすれば、中国は輸入先国のトップです。この中国を制裁し、中国にモノの動きを止められてしまうようなことにでもなれば、米国経済は大きなダメージを受けかねません。

 2月のCPI(消費者物価指数)上昇率は7.9%に達しており、前月に続き40年ぶりの高い上昇率を記録しています。すでに原油価格の高騰が加わり、インフレ懸念は高まっています。米国は政治、外交面から中国を厳しく非難することはできても、実際に中国経済に影響を与えるような制裁を科すことは難しいでしょう。

 米国といえども、思い通り中国を制裁できるほどの国力を持ちえない点に注目すべきです。そもそも中国人は欧米人とは気質が違います。自分の価値観を他人に押し付ける人物が大嫌いです(中国人の知り合いたちを見ていると、そのように強く感じます)。

 もう一度、株価の動きをご覧ください。3月15日を底にハンセン指数、上海総合指数が急回復していますが、それは3月16日午後に行われた国務院金融安定発展委員会による会議の内容を投資家が好感したからです。

 金融政策、中国概念株の海外上場廃止、プラットフォーム経済の管理、不動産政策など、足元の経済情勢や不安定な資本市場がテーマとなっており、その内容が大きなサプライズとなりました。

 香港市場に直接関連する部分では、「香港金融市場の安定に関して、本土、香港、両方の監督管理機関が関係を強化して協力して行う」といった方針が示されました。「海外に上場する中国概念株に関して、現在米中双方の監督管理機関が良好な交渉ルートを保持しており、具体的な協力案形成に向けて、積極的に取り組んでいる。中国政府はいろいろな形態の企業が海外に上場することを引き続き支持する」と強調しました。

 米国SECは3月10日、「ヤム・チャイナ(YUMC、09987)が2020年12月に成立した外国企業説明責任法に定めたSECベースでの監査に応じていないとして、上場廃止の危機に直面している」と発表しています。中国当局が欧米系監査法人による直接的な内部監査を認めないことから、273社が上場廃止リスクがあるとしています。

 米国による中国企業外しは、機関投資家にとって香港株を含め中国株を所有する際の大きなリスクと映り、このニュースを受けて、空売りを巻き込み、大きく売られたのですが、米中の監督管理機関が解決の道を探り始めたことで、その巻き戻しが起き、ハンセン指数は急反発したのです。

 そのほか、「プラットフォーム経済の健全な発展を促進する」とか、「しっかりと第1四半期の経済を振るい立たせるために、金融政策を主体とし、新規貸出の増加ペースを適切に高めるなど、共産党中央委員会が決定した政策を必ず実行する」とか、投資家が喜びそうな話が満載です。

 今後の中国株の見通しにおいて、当局のこうした積極的な姿勢は大きな支援材料になるでしょう。