水素の競争力を天然ガスと比較すると:

-  再生可能エネルギーによるグリーン水素製造コストは現在1キロあたり3ドルから6ドル
-  水素業界の目標は、技術革新と規模拡大によってこれを1ドルまで下げること
-  1ドルまで下がれば、天然ガスとの価格競争に対抗可能
-  世界の天然ガス価格は2021年半ばから上昇しており、ロシアのウクライナ侵攻でさらに高騰
-  欧州の天然ガスの現在の価格は水素でいうと1キロ約6ドルに相当

 コスト分析に加え、水素への転換にはロシア依存からの脱却という戦略的利点があることも忘れてはならない。現在の天然ガス価格の高騰は一時的なものであるにせよ、過去の価格レベルに戻ることはないだろう。

 従って欧州各国にとって、エネルギー保障政策の方向性は経済的観点からも明白である。水素を1キロ4ドルから5ドルに抑え、民間資金で運営継続可能な水素燃料インフラの構築を促進すべきである。

図4. 欧州の電力スポット市場の週間平均価格(Pegas); 注140ポンド/MWh以上のスポット価格は水素6ドル/キロに相当

資料: ブルームバーグ

 水素燃料の促進を図り、水素経済を推し進めるというのは興味深く将来性があるが、それがプラチナにどう関係するのだろうか。第一に水の電解を行うPEM電解装置はプラチナを触媒として使っており、PEM電解装置は安定性に欠ける再生可能発電に最適である。

 電解装置のプラチナ需要はしかし、比較的限定されており、現在の予測は今後10年間で15.6トンから31.1トンとなっている。第二に、そしてより重要なのは、水素製造インフラを拡大していけば、水素を天然ガスに混合して使うだけでなく、プラチナ需要の増加をもたらす大きな要因となり、燃料電池への直接的なエネルギー供給となることが挙げられる。