日経平均の見通し

「リスクオフムードの中、DIは低迷続く」

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

 今回調査における日経平均見通しDIの結果ですが、1カ月先がマイナス27.70、3カ月先はマイナス5.83となりました。前回調査の結果がそれぞれマイナス33.55、マイナス16.59でしたので、DIの値自体はともに改善した格好ですが、株安見通しは依然として優勢である状況が続いていると言えそうです。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 回答の内訳グラフを見ても、1カ月先については弱気派が45%を超えており、割合がいちばん大きく、目先の株安が意識されていると思われるほか、3カ月先の弱気派についても33%となっていて、中立派(39.83%)とあわせると、中期的な株価の先高感も乏しい印象となっています。

 さらに、今回の調査期間(2月28日~3月2日)の日経平均は、ロシアとウクライナによる停戦協議への期待感もあって、やや値を戻していたタイミングだったことを踏まえると、実際の見通しはもっと悪くなっていたことも考えられます。

 3月相場に入ってからも、ウクライナ情勢は株式市場に影を落とし続けています。

 今回の調査期間中の値動きが示したように、停戦協議や緊張緩和期待で株価が反発する場面も想定されますが、一時停戦などの「とりあえず」的な状況改善は好材料として長続きしにくい可能性には注意が必要かもしれません。

 確かに、一時停戦などによって人命が奪われることが回避されること自体は望ましいのですが、同時に「武力侵攻による主権独立国家への干渉を認めた」事例を残すことも意味します。

 ロシアが次の行動に出る懸念が燻(くすぶ)るほか、アジアなど他地域へ同様の火種が拡散されることにつながりかねず、戦術的な安全保障の判断や経済利害関係だけで安易に妥協することは中長期的に多くの問題を残すことになります。

 ウクライナをめぐる出来事は、これまでNATO(北大西洋条約機構)に非加盟だった国が加盟を検討し始めたり、日本国内でも安全保障の在り方を根本から見直すべきという議論が浮上したり、企業活動についても、サプライチェーンや資源の確保、取引先の選定などの戦略を練り直す必要が出てきているように、世界のパワーバランスの転換点に差し掛かっている可能性があります。

 また、最近までのインフレ警戒は、急ピッチな米金融政策の正常化の影響という視点が中心でしたが、地政学的リスクの高まりによって、事態の長期化がもたらす資源価格高騰へと移ってきているほか、さらに、ロシアへの警戒感が燻り続ける以上、経済制裁もすぐに解除されるとは限らず、インフレと景気後退の「合わせ技」によるスタグフレーションを織り込む動きとなれば、株価はさらに下がることも想定されます。

 事態はいまだ流動的なため、しばらくは不安定な相場展開が続くと考えられます。時折、短期的な株価反発はあるかもしれませんが、中長期的な投資スタンスなのであれば、今が「買い場」とは言い切れない面があり、注意深く相場に臨む必要がありそうです。