高水準に膨らむバークシャーの現金(手元キャッシュ)ポジション

 上場企業株投資はバークシャーの事業の一部であり、次のような上場企業に投資を行っている。

 前述の通り、アップルはバークシャーの最大化かつ最高の投資先の一つであるが、今ではアップルだけではなく、スノーフレークや、先日はマイクロソフトが買収すると発表したアクティビジョン・ブリザードなど、ハイテクへの投資も進めている。これはバークシャーの中において順調に世代交代が行われていることの証でもあるだろう。

「投資事業」

 次に、私たちが支配していない企業についてだが、このリストには再びAppleが登場する。そのうちのいくつかは、バークシャーの2人の長年の投資マネージャー、トッド・コームズとテッド・ウェシュラーが選んだものだ。年末時点で、この2人は340億ドルの投資に関する全権限を持っていたが、その多くは私たちが表で使用している基準値を満たしていない。また、トッドとテッドが運用する資金の大部分は、バークシャー社傘下の企業の年金プランに預けられており、これらのプランの資産はこの表には含まれていない。

上場企業に対するバークシャーのエクスポージャーと評価額

出所:バークシャーの資料から石原順作成

 取得コストに対する時価評価の増減率については筆者の方で加えたものである。投資期間が異なるため一概には言えないが、BTDへの投資やムーディーズ(MCO)など30倍以上になっているものもある。全体として3倍を超えるリターンは上出来だ。

「米国財務省証券」

 バークシャーのバランスシートには、1440億ドルの現金および現金同等物が含まれている(BNSFとBHEの保有分を除く)。このうち1200億ドルは米国財務省証券で、すべて1年以内に満期を迎える。

 チャーリーと私は、バークシャー(BNSFとBHE以外の子会社を含む)が常に300億ドル以上の現金および等価物を保有することを約束してきた。私たちは、バークシャーが財務的に非の打ち所がなく、決して他人(あるいは友人)の親切に依存しないようにしたいと考えている。私たち2人はぐっすり眠りたいし、債権者、保険金請求者、そしてあなたにもそうしてほしい。

 しかし、1,440億ドルとは・・。

 この堂々たる金額は、決して愛国心の熱狂的な表現ではないことを保証する。また、チャーリーと私は、企業オーナーになることへの圧倒的な憧れを失ったわけでもない。今から80年前の1942年3月11日、私はシティーズサービスの優先株を3株購入し、初めてその熱意を示した。その時の費用は114.75ドルで、私の貯金をすべてつぎ込む必要があった。(「その日のダウ平均株価は99ドルであった。決して米国の成長には逆らってはならない」)

バークシャーの手元キャッシュも過去最高水準に膨らんでいる

出所:バークシャーの資料を元に石原順作成

 最初の暴落の後、私は常に純資産の80%以上を株式で維持していた。この間、私の好みは100%であり、現在もそうである。バークシャーの現在の80%程度の株式保有は、私が長期保有の基準を満たす企業全体あるいはその一部(つまり市場性のある株式)を見つけられなかった結果である。

 チャーリーと私は、過去に時々、同じようなキャッシュヘビーポジションに耐えたことがある。このような時期は決して楽しいものではなかったが、決して永続的なものでもない。そして幸いなことに、2020年と2021年の間に、資本を展開するための穏やかな魅力的な代替手段があった。続きを読んで欲しい。

 バークシャーの現金残高が高水準で推移している。これは、企業投資への熱意が失われたわけではないし、可能であればほぼ100%の比率で株式に投資したいと考えていると述べている。

 現在のキャッシュポジションの積み上がりは、あくまで「投資先がなかった」ことの結果だ。これはここ数年、バークシャーが常に直面している課題だ。しかし、投資先を見つけられなかった一方で積極化したのは「自社株買い」である。