今週は振れ幅の大きい展開を想定

 このように、日米の株価指数のチャートを見る限りでは、まだリスクオフムードは払拭(ふっしょく)されていないものの、テクニカル分析的に目安となるところで下げ止まっており、2020年2~3月の「コロナショック」時のような、ショックもしくはパニック的に売りが重なるような状況ではないといえます。

 また、過去の相場の経験則では、地政学的リスクは「有事の買い」が有効だったことや、株式市場がすでに売り込まれていたこともあって、買い戻しに勢いが出やすかったことも、週末にかけての株価上昇につながったと思われます。

 例えば、NASDAQやラッセル2000などに代表される、年初から下落が目立っていたグロース株や中小型株の銘柄が、大きく上昇している傾向がみられます。

 さらに、地政学リスクの警戒感が高まることで、米国の金融政策の引き締めペースを緩めさせて株価を支えるという期待も浮上しています。

 しかし、この点については、米国金融政策の正常化ペース加速に対する景気減速懸念というネガティブ(マイナス)な相場地合いに、地政学的リスクというマイナス材料が加わることで、マイナスどうしの「足し算」でマイナス幅が大きくなるところが、一部の期待による「掛け算」でプラスになったという状況のため、少し注意が必要かもしれません。

 ウクライナの戦線のさらなる拡大のほか、国際世論の風向きの変化、週末に発表された対ロシアへの経済制裁(SWIFT[=国際銀行間の送金・決済システム]からロシアの銀行を除外するなど)の影響、米国の金融政策がウクライナの情勢に関係なく進められていくという見通しが強くなれば、株価が再び下落し始めることも考えられます。

 今週は、3月1日にバイデン米大統領による一般教書演説が予定されているほか、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言(2日)や、米2月ISM(米サプライマネジメント協会)景況感指数(製造業は1日・非製造業は3日)、米2月雇用統計(4日)など、金融政策の行方を示すイベントが控えています。

 イベントの結果や動向次第では、短期的にさらなる戻りトライの展開もありそうですが、中長期的には相場の見通しシナリオの再構築を探ることになり、下落局面も増えることが考えられます。

 そのため、今週はムードが変わりやすい中、日経平均なら2万6,000円割れ、NYダウならば3万4,000ドル割れ、NASDAQなら1万3,000p割れといった、先週の下落で「値覚え」した価格帯を下値のめどとして、株価の振れ幅が大きい展開が想定されます。