3.バリュー株相場の「賞味期限」と実質長期金利

 上述したバリュー株優勢(グロース株劣勢)は、いつまで続くのでしょうか。図表4は、米国の実質長期金利(10年国債利回り-期待インフレ率)と、「バリュー株対グロース株」(S&Pバリュー株指数÷S&Pグロース株指数)の推移を振り返ったものです。

 マイナス圏の実質金利は、株式の高いバリュエーションを正当化し、昨年までのグロース株優勢の要因になってきました。しかし、最近の実質金利上昇は、景気回復からの影響が相対的に大きい割安なシクリカル(景気敏感株)へのローテーションを後押しました。

 インフレ率の高止まりで、債券市場が金融政策変更(利上げサイクル入り)を織り込んだことが、債券の名目金利や実質金利の上昇要因とされます。図表4でみるとおり、実質長期金利の上昇がバリュー株優勢の追い風となっている傾向がうかがえます。

 上昇したといっても、実質金利はいまだマイナス圏(▲0.46%)に位置しています。資金調達コストを上回る業績回復が、株式全体の復調(業績相場)を支えていくと考えられます。

 そうしたなか、実質長期金利の上昇が続くなら、バリュー株優勢(グロース株劣勢)の動きが続く可能性があります。将来のインフレ予想を織り込む「期待インフレ率」の上昇が限定的である一方、FRBの連続的利上げやQT(FRBの保有資産縮小)を警戒し、債券市場の名目金利は上昇しています。

 米国の実質長期金利の行方は、市場内の業種別物色に影響を与える可能性があり、注視したい事象です。当面は、米国で発表される各種インフレ指標(例:消費者物価指数)の伸びと、FRBが3月15~16日に開催するFOMC(米連邦公開市場委員会)で決定する、金融政策および債券市場の反応に市場の関心が集まる見込みです。

<図表4:実質長期金利の上昇はバリュー株優勢の追い風>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2019年初~2022年2月8日)

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