KY投資家にならないために

 KY(空気読めない)など死語を今さらと思われるかもしれませんが、相場に取り組むには、KY投資家を脱することが決定的に重要と考えます。相場を動かす「外的力学」としてのファンダメンタルズも、「内的力学」としての心理・行動も、両方を覆う「空気」、すなわち情報環境に押し流されるのが通常の状態と踏まえて臨みます。

 そのため、少なくとも情報発信元の属性、彼らの相場力学下の情報発信の性向を推測することから始めましょう。メディア、専門家としての金融業者、(相場をしない)評論家、学者、政策当局者、あるいはSNS(会員制交流サイト)の人たち、ポジション・トークの投資家など、それぞれに類型化された情報発信のパターンがあります(トウシル動画で簡単に解説します)。

 こうした情報発信は批判したところでなくなることはありません。妙に歪(ゆが)んだ情報に思えても、悪意ではなく、それぞれの立場にとって真摯(しんし)な真意であったりします。

 要は、多様な情報発信は市場の常態であり、その情報に流されるも生かすも、己を守れるのは己だけということに尽きます。

 相場はそもそも情報を巡る情報心理戦と言えます。そこを生き抜くためには、冷徹なロジックに基づく胆力を育成するか、そんな面倒は嫌という人なら、相場は上方向が基調と信じて達観を決めるか、です。

 筆者としては、達観派の方々にも、最低限のリスク感度として、相場の情報環境がどのようなものかを知っておいていただきたいとは考えます。

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