2022年1月に語られたこと

 米株式相場は、年明け初日1月3日は堅調で、2022年も経済、企業業績は堅調見込みと解説されたものです。しかしその裏で、債券市場は不安に駆られた売りが優勢でした。5日公開の12月FOMC(米連邦公開市場委員会)議事録で、タカ派色の強い内容が盛り込まれると危惧されたからです。

 金融相場終盤かという株価は、想定以上の金利上昇に対してタフではなく、案の定、4日寄付きの堅調から急反落しました。その直後の市況解説は景気先行き懸念に変わりました。「相場下落⇒なぜ?⇒景気の先行き悪化」という脈絡です。年明けの「株高⇒景気良好」はどこかに消えましたが、いずれ相場反発場面には復活するでしょう。

 さて、相場下落が続くと、「景気悪化⇒FRBの過度の金融引き締め」との連想から、市場が織り込む2022年中に利上げ4回に対して、3月以降全FOMCで0.25%ずつ7回利上げ説も出てきました。2004~2006年に実際に行われた利上げステップであり、荒唐無稽な話ではありません。

 しかし、まだインフレ動向が不透明なのに、いきなり7回というのは、市場の不安を刺激して相場にインパクトを与えられるので、情報発信者によっては「早く言ったもの勝ち」のような扇動を好む人も出てきます。

 25日のFOMC後の記者会見で、パウエルFRB議長は慎重な言葉選びに終始しました。神経質な株式・債券市場に無用な言質を与えたくなかったでしょうし、インフレが不透明な段階で、金融政策の先行きを縛る不必要な発言を避ける必要もあります。

 しかし記者たちからは、FOMCごとの利上げはあるか、金融引き締め前倒しはあるかと、意地の悪い(市場関係者が聞きたい)質問が続きます。議長がそれらをやんわりかわすと、「市場では議長は否定しなかった、やはりタカ派傾斜を強めている証拠だ」と気にする向きが。

 これも、相場下落環境の空気が生む偏向です。