スタンスを定める基本シナリオ

 相場は、実証的アプローチを試みるものの、そもそも不確実性の塊のような運動体で、関わる人々の心理を揺り動かすようにできています。そして、実証(ファンダメンタルズ)と心証(心理・行動)の両方を覆って、判断を押し流すのが「空気=情報環境」です。その意味で、相場に関わる情報それ自体が相場分析の柱の一つです。

 出回る情報をうのみにすることなく、その情報自体がなぜ今出回っているのか、自らを惑わす「空気」ではないかと、疑ってみる視点を持つことが重要です。

 このため、筆者自身も、ちまたの情報をリスク要因として判定する基準として、まず自らのスタンスを定める実証ベースの基本シナリオを据えるようにしています。リスク要因として抽出した情報から、基本シナリオへ必要な調整を見いだしていくアプローチです。

 昨今のファンダメンタルズについて、筆者なりの基本シナリオを整理すると、

(1)景気
 改善基調にあるものの、経済指標にはオミクロン株や供給網問題などノイズが多い

(2)インフレ
 2022年前半に一過性要因の鈍化の可能性、後半は真性インフレへの余勢をチェック

(3)FRB
 3月初回利上げ後、6月まで複数回利上げし、インフレ動向を見ながら、年後半にQT(量的引き締め)へ

(4)企業業績
 基調良好。ただしコロナ禍での浮沈の程度、業界ごとの跛行が大きく、相場が下がると、弱振れ部分が強調されやすい

(5)オミクロン株
 感染力の強さは経済へのノイズながら、コロナの脅威の終わりの始まりをもたらし、ウィズ・コロナでの経済正常化が進む

 以上、いたってシンプルなシナリオですが、シンプルであることがアンカーとしての要件でもあります。

 相場については、2020年3月下旬以来1年9カ月にわたった大金融相場に対する「中間反落」の調整を6カ月前後と初期設定し、5つの基本シナリオ、特に(2)と(3)のリスク度に応じて、調整していく構えです。