逃げる行動学判断

 もっとも、インフレ動向が不透明で、予想も確信度が低い状況では、予想以上に、リスクの確率を評価して淡々と備えることが重要です。中間反落は、インフレやFRBの行動、金利上昇が現実になってからより、投資家の不安心理から先行して起こりがちです。自らの投資に損失が出るかもという不安が先走るのです。幽霊が出るか出るかとビクついて、物音一つに驚いて逃げ出すような展開が、市場では実によく起こります。

 それだけに、市場の既存の投資ポジションがどの価格帯に多く、相場がどこまで下がれば、逃げ出す予備軍が控えているかを留意します。厳密なデータは存在しないので、直近までの相場が保ち合った水準や取引高を、チャートでざっくり意識するのが事始めです。

 しかし、適切な判断は往々にして相場自体に妨げられがちです。市場参加者は、直近の相場の方向を追認するように、相場材料を判断する性向があります。買って、上昇が続くと、自分の洞察に確信を強め、含み益が増えるとリスク判断が甘くなるのは人の常。こうして慢心が優勢になり、中間反落のリスクを軽視したり、織り込み済みだから大丈夫などと曲解したり。

 このワナに陥らないために、相場トレンドに乗ったら、自分の想定を正当化することを戒めとして、逆に予想が裏切られ、投資に損失が生じるリスクばかり注視するアプローチを、筆者はとっています。そのリスクが十分小さい限り、投資ポジションをホールドします。

 その際のチェックポイントは、(1)相場の速さ(市場全般の含み益、つまり潜在的な売り逃げ圧力が増加)、(2)相場のモメンタム(=勢い。価格より通常は先にピークを打つ傾向)、(3)既存ポジションのコスト分布(売り逃げ勢力の事前把握)、(4)投資家の逃避を呼ぶきっかけ要因、(5)相場が落ちた後に追認材料とされる要因(テクニカル分析なども)など。言葉にすると大変そうと思えるでしょうが、チャートを観察する人は多かれ少なかれこうしたことをチェックしているでしょう。