バイロン・ウィーン氏による「2022年サプライズ10大予想」

  1. インフレ圧力拡大でS&P500は20%近く下落するが、年末までに前年から横ばいになる
  2. コモディティ価格は下がるが、賃金や家賃が上昇を続け、CPI(消費者物価指数)は4.5%に上昇
  3. インフレ上昇とFRB(米連邦準備制度理事会)テーパリングに反応し始め、10年債利回りは2.75%に。FRBは年内に4回利上げ
  4. オミクロン株感染拡大でも、大規模集会平常化。コロナの影響は残るが米国では生活はおむね正常化に
  5. 中国政府が不動産投機への規制を強化し、個人の投資マネーが他の金融商品に向かう
  6. インフレヘッジのため金投資が活発になり、金は20%上昇し、史上最高値に
  7. 需給逼迫(ひっぱく)で、*WTIは100ドル超に
  8. 安全性向上が図られ、原子力エネルギーが再評価
  9. **ESGは企業の方針から規制へ
  10. 電気自動車の電池市場を中国が掌握

*WTIとは…西テキサス地方の中質原油という意味で、この地方の原油は含有硫黄分が少なく軽質で、ガソリンや軽油が多く採れるといった特徴があります。

**ESGとは…持続可能な世界の実現のために、企業の長期的成長に重要な環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)の3つの観点。

 以上となりますが、今年の市場については

  • 米株は20%下落後、S&P500は年末までに前年比横ばいに
  • CPIは4.5%、米10年債利回りは2.75%に上昇、FRBは年内4回の利上げ
  • WTI原油は100ドル超に上昇、金は20%上昇し、史上最高値に

 とみているようですが、今年は、インフレ上昇が続くという前提で予想を立てているようです。その見方については、一般の市場の見方とあまり変わりはありません。バイロン・ウィーン氏の予想は、楽観的で強気な予想が多く、当たらない部分も多いのですが、今年は例年と比べて「サプライズ」感が少ない印象です。

 株式市場に対していつも楽観的な同氏が、今年は横ばい予想をしたことが「サプライズ」なのかもしれませんが、「サプライズ」というよりも意外感がありました。株はピークアウトしたとみているのか、あるいは今年は強気相場の中の小休止とみているのかもしれません。

 FRBの利上げについても、年内4回の見方はマーケットでも増えてきているため、サプライズ感は少ないです。それよりも利上げ見送りの方がかなりのサプライズになります。

 原油と米10年債利回りは予想の方向に進んでいますが、予想数字に届くかどうか注目です。

 今年の「サプライズ10大予想」は、サプライズ感が少ないと述べましたが、ただ、ご意見番の予想ですので、相場シナリオを想定する際に参考材料として活用することができます。

 前回のユーラシア・グループの「政治に関わる10大リスク」や今回のバイロン氏の「経済・金融のサプライズ10大予想」を事前に留意しておけば、相場への対応が違ってきます。これらのリスクが発生した場合、あるいは予想通りに進展した場合に、冷静に対応することができます。

 そういう意味で前回と今回のコラムを四半期ごとに読み返し、進展度合いをチェックしてみるのもよいかもしれません。