今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい国(地域)」で、「日本」と「アメリカ」を選択した人の割合と、「今後投資してみたい金融商品」で、「国内株式」と「外国株式」を選択した人の割合に注目します。

 質問「今後投資してみたい国(地域)」は複数選択可で、選択肢は、日本、アメリカ、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になしの13項目です。

 質問「今後、投資してみたい金融商品」も複数選択可能で、選択肢は、国内株式、外国株式、投資信託、ETF、REIT(上場不動産投資信託)、国内債券、海外債券、FX(外国為替証拠金取引)、金やプラチナ地金、原油先物、その他の商品先物、金先物取引、特になしの13項目です。

 以下は、質問「今後投資してみたい国(地域)」で、「日本」「アメリカ」を選択した人の割合の推移です。

図:「日本」「アメリカ」を選択した人の割合

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 12月の調査で、「アメリカ」を選択した人の割合は77.0%でした。77.0%は2008年10月の統計開始以来、最高です。一方、「日本」は30.2%でした。両者の差である46.8%は、日本を選択肢に含めるようになった、2016年5月以来、最大です。

 当該データより改めて、日本の投資家の皆様の間で「海外志向」が進行していることを、確認しました。こうした「海外志向」の強まりは、以下の「今後投資してみたい金融商品」の回答結果でも確認できます。

 12月の調査では、「外国株式」を選択した人の割合は52.3%でした。52.3%は、統計史上最高です。一方、「国内株式」を選択した人の割合は48.1%でした。統計開始以来、初めて「外国株式」が「国内株式」を上回りました。前回、「外国株式」が「国内株式」に「肉薄」している、と書きましたが、ついに上回りました。

図:「国内株式」「外国株式」を選択した人の割合

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 12月の調査結果は、国内の個人投資家の皆様の間で「海外志向」が進行していることを、改めて強調しました。詳細なデータを確認すると、若い方だけでなく、50歳代でも「海外」を志向する傾向がみられます。

「海外志向」が進んでいる主因は、いわゆる「トランプラリー(トランプ米大統領の誕生後に発生した株価上昇)」に端を発した、長期的な米国株の上昇にあると考えられます。株価が長期的に上昇するにつれ、「外国株式」や「アメリカ」を今後投資してみたい対象に選ぶ人の割合が上昇していきました。

「海外志向」が鮮明になる中、「国内株式」「日本」といった、「国内」関連のデータはどのような状態なのでしょうか? 「海外」関連のデータの上昇の陰で下落しているように感じますが、実際はそうではありません。

 質問「今後投資してみたい金融商品」における「国内株式」は、50%前後を、質問「今後投資してみたい国・地域」における「日本」は30%前後を維持しています。いかに「海外志向」が進んだとしても、「国内」関連のデータは一定水準を維持しているわけです。

 このことは、今後、「外国株式」や「アメリカ」の割合がさらに上昇しても、「国内株式」や「日本」の割合が、現在の水準を底割れしない、つまり、日本の投資家の皆様の間で「海外」と「国内」が「共存」する(「海外」にのみ関心がある状態にならない)可能性を示唆しています。

 日本の投資家の皆様の間で「海外」に目を向けることがあたり前になったからこそ、かえって、「国内」の重要性を実感している投資家が存在すること、そして、「国際分散投資」を推進する上で重要な、「海外」と「国内」の「共存」が、投資家の皆様の間で息づいていることを、このデータが示していると、筆者は考えます。

 引き続き、「今後投資してみたい金融商品」および「今後投資してみたい国・地域」の動向に、注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2021年12月調査時点 (複数回答可)

投資対象 割合 前回比
国内株式 48.12% ▼ 2.54%
外国株式 52.39% △ 5.85%
投資信託 45.72% △ 3.27%
ETF 40.53% △ 7.17%
REIT 13.07% △ 0.52%
国内債券 4.03% ▼ 0.06%
海外債券 7.23% △ 0.81%
FX(外国為替証拠金取引) 6.08% ▼ 1.00%
金やプラチナ地金 12.75% ▼ 0.65%
原油先物 2.49% △ 0.01%
その他の商品先物 1.75% △ 0.18%
金先物取引 1.96% △ 0.75%
特になし 5.87% ▼ 2.20%
出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2021年12月調査時点 (複数回答可)

国名 割合 前回比
日本 30.21% ▼ 2.67%
アメリカ 77.05% △ 6.43%
ユーロ圏 7.06% △ 0.63%
オセアニア 4.21% ▼ 0.32%
中国 8.21% △ 0.07%
ブラジル 2.25% △ 0.21%
ロシア 1.39% ▼ 0.07%
インド 29.29% △ 2.17%
東南アジア 14.88% ▼ 0.66%
中南米(ブラジル除く) 2.13% △ 0.93%
東欧 1.33% △ 0.06%
アフリカ 5.31% △ 0.60%
特になし 4.68% ▼ 3.34%
出所:楽天DIのデータより筆者作成