為替DI:1月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 DIは「強さ」ではなく「多さ」を測ります。DIは円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけではありません。しかし、アンケートに個人投資家の相場観が正確に反映されているならば、DIの「多さ」は「強さ」に関係することになります。

「今月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券が先月末に実施した相場アンケート調査によると、個人投資家3,373人のうち半数を超える54%(1,818人)が、1月のドル/円は「ドル高/円安」に動くと予想しています。

 先月に比べて円安見通しは6ポイント増えました。

ドル安/円高」予想は全体の16%(548人)で、先月に比べて円高見通しは10ポイント減。30%(1,007人)は、「動かない(わからない)」でした。

インフレは遠きにありて想うもの

 海外の投資家が考える2022年の最大のリスクとは何か?

 それは新型コロナでも米中関係でもなく、「中央銀行」だそうです。今年いつ利上げするのか、あるいはしないのか? するならばいつか? FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げしたら、ECB(欧州中央銀行)はどうするのか? 日銀はいつまで量的緩和を続けるつもりなのか? などなど、今年の中央銀行の政策の予測はとても難しい。

 しかも中央銀行の金融政策は、他の経済指標とは比較にならないほど、FXや株式市場に重大な影響を与えます。

 では、何が中央銀行の政策を動かすのか? それは「インフレ」です。

 インフレはグローバルな事象ではなく、各国の経済事情によって異なるローカルなイシューといわれますが、今のインフレは米国だけではなく、欧州、英国、中国と、世界同時多発的に発生しています。日本も無関係とはいっていられません。

 1月に食パンの値段が10%近く値上げされたことを皮切りに、今年は食料品や衣料品、家電や自動車、保険料から交通運賃にいたるまで、ほぼ全分野の商品が大幅値上げとなるのは避けられないのです。昨年11月の国内企業物価指数は、すでに41年ぶりの上昇となっています。

 このインフレはどのようにして始まったのか。それは新型コロナです。2020年3月に新型コロナ感染が大流行して、世界の主要都市が次々とロックダウンを導入。多くの人々は仕事を失い、移動の自由を奪われるなかで、中央銀行は緊急利下げと未曽有の量的緩和を行い、政府は経済対策として現金給付を決定しました。

 2021年になってコロナワクチンが普及し始め、昨年1年で米国では75%、日本では80%、世界全体でも50%が部分接種を完了。そのおかげもあって移動制限が緩和され、人々が再び自由に外出できるようになると、「リベンジ消費」と呼ばれる時間差の消費需要が発生しました。

 需要はいちどきに発生し、またロックダウン期間中の小売店は在庫が品薄だったことも重なって、流通網に多大な負荷をかけた結果、インフレが大発生。

 つまり、需給のバランスが崩れたことがインフレの原因といえます。2021年後半の経済は、ロックダウンや緊急事態宣言などで使う機会がなかったお金を財源として発生した熱狂的な消費者需要が、インフレを加速させたのです。

 しかし、給付金をすべて使い切ってしまったら、異常な需要は終息してインフレも波が引くようにいなくなる可能性がある。ECBはそう考えていて、利上げする必要はないとしています。

 FRBも最初はインフレ一過性論者だったのですが、想定以上にインフレが長引いていることを認め、利上げの準備をしています。インフレへの警戒がマックスに高まっている今が、異常から正常への転換点に立っているのかもしれません。

 ところがオミクロン変異株が登場したことで、再び先が見えなくなっています。感染拡大が収まりません。各国の政府がロックダウン再導入を決断し、景気対策で現金を給付するならば、2020年の繰り返しとなり、オミクロン変異株は一段のインフレ要因となります。

 しかし、政府の財源は無限ではない。現金給付金なしで厳しい移動制限を強制するならば、需要は後退し、特に旅行などサービス産業がダメージを受けることになるでしょう。この場合、オミクロン変異株は逆にデフレ要因となります。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券が実施した相場アンケート調査によると、個人投資家の36%が1月のユーロ/円は「ユーロ高/円安」に動くと予想。

 ユーロ高見通しは、先月から5ポイント増えました。

ユーロ安/円高」予想は全体の15%で、先月から12ポイント減。

 残り49%は「動かない(分からない)」でした。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

 楽天証券が実施した相場アンケート調査によると、個人投資家の32%が1月の豪ドル/円は「豪ドル高/円安」に動くと予想。

 豪ドル高見通しは、先月から3ポイント増えました。

豪ドル安/円高」予想は14%で、先月から9ポイント減。残り54%は「動かない(分からない)」でした。