天然ガス版OPEC、「GECFプラス」とは?

 欧州委員会が天然ガスに「お墨付き」を与えることを示唆したことで、天然ガスへの関心が、今まで以上に高まることが予想されます。こうした動きを好意的にとらえていると考えられるのが、天然ガスを輸出している国々です。

「GECF (The Gas Exporting Countries Forum:ガス輸出国フォーラム)」という産ガス国のグループがあります。さしずめ、「天然ガス版のOPECプラス」となるでしょうか。

 GECFは、最初の会合を2001年に行いました。2007年ごろから活動を本格化させ、現在、11カ国のメンバーと、7カ国のオブザーバー(≒議決権のない参加者)とで構成されています。18カ国中、12カ国がOPECプラスのメンバーです。

 産油国の一つである北欧のノルウェーが含まれているのは、随伴ガス(原油を生産した際に油田から発生する天然ガスの一種)の生産が行われているためだと、考えられます。また、事務局長はロシア政府でエネルギー関連の要職を務めた人物(ユーリー・センチュリン氏)です。

図:GECF(ガス輸出国フォーラム)

出所:GECFの資料より筆者作成

 昨年より、GECFとOPECの連携強化が目立ち始めています。OPECの資料によれば、GECFは、2021年10月27日に、前年(2020年)11月に続き2回目となるOPECとの合同会合を主催しました。

 2020年11月は、バイデン氏がトランプ氏との激戦の果てに勝利宣言をした、米大統領選挙が行われた月でした。GECFとOPECは、バイデン氏が前面に押し出した「脱炭素」推進への強い姿勢が、彼らの生命線ともいえる化石燃料の存在を脅かしていると、受け止めた可能性もあります。

 しかし現在、あの環境配慮先進地域の欧州が、彼らの生命線の一つである天然ガスに「お墨付き」を与えることを示唆しました。この示唆により、(石炭と石油は、今後さらに市民権を失うことになるかもしれませんが)これまで見られた化石燃料を漠然と広く否定する動きに変化が見られたことは、確かでしょう。

 今後長期的に、GECFがこうした動きに乗じて、OPECプラスがそうであるように、消費国に根強い需要があることを逆手にとって、「減産による価格引き上げ」や「増産による価格引き下げ」を行ったり、大きなシェアを後ろ盾にして、アナウンス効果を使って世界のエネルギーの安全保障や政治問題などに対して、影響力を持つようになったりする可能性を否定することはできません。

 欧州の天然ガスへのお墨付きを与える示唆は、GECFの影響力を大きくする大きなきっかけになるかもしれません。