イベント3:米中関係

 中国共産党や政府の関係者と議論をしていると、2022年、政権運営にとって最大のリスクは「米国」という声が普遍的です。上記の北京冬季五輪の開催を巡っても、米国のバイデン政権に端を発した「外交ボイコット」が、西側諸国の対中包囲網の引き金になっています。バイデン政権として、中国共産党による新疆ウイグル自治区の少数民族への人権侵害を見過ごすことはあり得ないでしょう。

 昨年のクリスマス前夜、バイデン大統領はウイグル強制労働防止法案に署名しました。強制労働で生産されたものではないと企業が証明できる場合を除き、新疆ウイグル自治区からの産品の輸入が禁止されることになります。これに対して中国は激しく反発しています。米中双方でビジネスを展開する日本企業は、サプライチェーン(供給網)や経営戦略の見直しが必至となり、状況次第では企業の収益や信用に打撃となるでしょう。

 その他、昨年12月の選挙を経て、議会から「民主派」が消え、「親中派」一色となった香港問題、中国の台湾侵攻を含めた地政学リスクを含め、これらの構造的問題は基本的に米中間の攻防、摩擦、対立に端を発しています。日本を取り巻く安全保障環境、そして市場動向にも直接的な影響を及ぼしかねません。2022年、引き続き米中関係から目が離せません。

イベント4:全国人民代表大会(全人代)

 北京五輪閉幕の約2週間後に開幕が予定されている一年に一度、最大の政治イベントです。注目点は二つだとみています。一つ目が、人権問題、新型コロナを含め、予断を許さない状況が続く中で迎える北京冬季五輪を安全かつ円満に開催した上で、全人代を迎えることができるかどうか。二つ目が、2022年の経済成長率がどれくらいに設定されるか、です。

 前者に関しては、仮に五輪開催期間の前後に新型コロナが急速に感染拡大する、あるいは開催期間中に人権問題をきっかけに諸外国との関係が劇的に悪化するといった事態が発生すれば、2020年同様、全人代そのものが延期になる可能性も否定できません。

 後者に関しては、コロナ禍からのV字回復もあり、2021年のGDP(国内総生産)成長率は8.0%前後を見込めますが、李克強(リー・カーチャン)首相も示してきたように、肝心なのは2022年以降です。2021年が良いのは当たり前。中国経済が安定的に成長しているかどうかを計測するための「元年」が2022年ということです。その意味で、全人代で2022年の成長目標をどれくらいに設定するか。「5.0%前後」、「4.0~5.0%」、あるいは「6.0%前後」か? 見ものです。

イベント5:経済情勢

 昨年12月に開催された、一年で最も重要な経済会議「中央経済工作会議」において、2022年は安定最優先、そのための成長重視、という方針が明らかにされました。民主選挙で指導部や議員が選ばれるわけではない中国において、経済成長は政権正統性を担保する上で何よりも重要な指標になります。

 現在、そして予測可能な未来において、中国共産党指導部の経済政策にとっての至上命令は、成長と改革という両輪を同時進行で回転させていくことにほかなりません。ただ、人間のやることですから、きれいに半分ずつの労力を割くなんてことはできず、必ずひずみが生じてきます。私の分析では、教育、IT(情報技術)、海外上場など、さまざまな分野で規制が強化された2021年は「改革」寄り、2022年は「成長」寄りの政策をとるでしょう。

 そのため、インフラ、科学技術、不動産といった分野を中心に、積極的な財政出動による投資が、マクロ政策の筆頭として強化されると私は見込んでいます。年末、党指導部のマクロ政策策定に直接関与する立場にある経済学者と話をしましたが、「2022年、何よりも重要なのが成長を担保、促進させる政策を打つことだ」と断言していました。