イベント6:“規制ラッシュ”

 2021年の中国経済を振り返るとき、各種分野で市場動向や企業活動への規制が強化されたこと、すなわち“規制ラッシュ”を思い出す投資家は少なくないでしょう。基本的に、ネガティブに受け止められ、リスク要因と見なされました。そういう見方は間違っていないと思います。

 一方で、習近平政権からすれば、一部の人間だけを富ませる「先富論」ではなく、社会全体で豊かになる「共同富裕」という新たな成長戦略の下、経済全体を底上げするための市場ルールの整理、すなわち「改革」を意味しています。私自身、政策が適切に実行されれば、短期的には代償を伴っても、中長期的には中国経済や市場の魅力を深化させるとみています。

 ただ、中央経済工作会議で2022年度の方針が示されたように、今年は「改革」よりも「成長」重視。上記の経済学者を含め、党指導部の経済政策策定に関与する関係者たちは、昨年打ち出した規制強化策が、海外投資家を含めた市場関係者によくない印象を与えていることを明確に認識しています。従って、関連省庁は今年、昨年度に比べて規制強化策を打ち出すのに慎重に慎重を重ねると私はみています。根拠は、「成長重視」だからです。

イベント7:日中関係

 私自身、日ごろ日本の機関投資家と議論する過程で切実に感じることですが、彼らは日中関係を非常に重視し、その動向をウオッチしています。端的に言えば、尖閣諸島を巡る問題や歴史認識問題などが引き金となり、日中関係、日本国民の対中感情が悪化することは、対中投資の弊害になるということです。

 本来、感情をベースとする対中世論(理性要因を否定するものではない)が、理性をベースとする対中投資(感情要因を否定するものではない)を左右するというのは合理性に欠けると言わざるを得ないですが、それもまた日本人の対中認識を巡る真実なのだと、私自身は感じてきました。

 2022年は、日中国交正常化50周年という節目の年にあたります。コロナ禍で依然人の往来は極端に制限されるものの、両国政府は当然、記念式典の開催などを通じて、両国関係や国民間の信頼構築を促そうとするでしょう。

 この要素は、日中経済関係や日本人の対中投資には総じてプラスに働くと私はみています。政策当局者が「友好偏重」、「安定重視」、「衝突回避」を前提に政策を組み立てるからです。

イベント8:第20回党大会

 2022年の中国情勢にとって最も重要な政治イベントです。開催は5年に1度。秋に予定されています。今回の党大会最大の焦点は何といっても、「習近平第3次政権」誕生なるか、習氏は誰を「後継者」に据えようとしているか、その人物の存在は明らかになるのか、にほかなりません。最終的には、2023年3月の全人代で、習氏が総書記(党のトップ)、軍事委員会主席(軍のトップ)以外に、国家主席(国のトップ)を続投するかが明らかになりますが、党大会で大体の全貌は見えてきます。

 仮に習氏続投となれば、政治や経済、外交、軍事を含めたあらゆる政策は維持、あるいは強化されることになり、私たちの中国を眺める視点にも必然的に影響してきます。中国という巨大市場がどこへ向かうのかを占う上で最大の焦点となるのが、習氏が続投するかです。今年一年全体を通して、中国からますます目が離せなくなると言えるでしょう。