雇用復活のカギは「プライムエイジ」

 今週発表される12月の雇用統計では、NFPは40.0万人増まで回復する見込みです。しかし100万人増には遠く及ばず、昨年11月までの平均増加者数である月平均51.7万人よりも低くとどまる可能性があります。

 なお、米国で働き手が減少している理由については、過去の雇用統計レポートで解説していますので、ぜひご覧ください。

 FRBや海外投資家が今後の雇用統計で注目しているのは、NFPではなく労働参加率。労働参加率がこれからも継続して低下(悪化)していくのか、ということが米経済にとってより重要な意味を持つからです。11月の労働参加率は61.8%。10月に比べて若干改善しましたが、コロナ禍前の2020年2月よりも1.5ポイント低く、いまだにその差を埋められていません。

 楽観的な投資家は、コロナ禍から立ち直った労働者が雇用市場に再び戻ってくるから、労働参加率は上昇すると期待しています。一方、悲観的な投資家は、ミドル後半世代の早期退職あるいは就業せずに子育てをする傾向は止まることはなく、雇用市場がコロナ前の状態に戻るには非常に長い時間を要すると考えています。

 もっとも、労働人口の高齢化が進むと、当然ながら労働参加率は下がります。16歳以上を対象とした労働参加率の数字だけでは、実際何が起こっているのかよく分からない。重要なのは、プライムエイジ(25歳から54歳)の労働参加率です。

 プライムエイジの労働参加率が伸びないということは、別の言い方をするならば、雇用市場の回復が遅れているということ。労働者が増えなければ賃金上昇圧力は高まり、FRBはインフレがより深刻になると心配することになります。大幅な利上げが必要だと考えます。

 FRBは雇用創出のスピードがさらに速くなることを期待していますが、残念ながら今のところそれを示す証拠はほとんどありません。ドル/円が年明け早々116円台まで円安に動いた背景に金利差拡大の思惑があるならば、その傾向は今後さらに強まることになります。