“親中派”の新議会で何が始まるのか?キーワードは「脱政治化」

 そして、12月19日、選挙が行われました。

 ふたを開けてみると、案の定、投票率は過去に比べて大きく減りました。香港市民が直接投票できるのは、選挙区の直接選挙だけですが、この投票率が、2012年の53%、2016年の58%から、今回は30.2%まで落ち込みました。選挙制度の見直しを受けて、市民の政治に対する見方や姿勢がガラリと変化した何よりの証拠といえます。

 香港政府は選挙当日には公共交通機関を無料にして、投票を促そうとしていました。ただ、「当日、香港各地は人の流れであふれていた。しかし多くの市民は投票に行くのではなく、政府の無料政策に便乗して、休日を楽しもうとしていただけだ」(香港市民、30代、男性)といいます。

 今回は153人の「愛国者」が90議席を争いましたが、89人が「建制派」と呼ばれる親中派、1人が「非建制派」と呼ばれる中間派です。ただ、この中間派も当局から「愛国者」と認定された、言い換えれば中国共産党やその政治制度に反対することはあり得ません。要するに、今回の立法会議員選挙を経て、香港の議会は全議席が実質“親中派”で埋まったということです。香港政治の“北京化”を象徴、立証するに十分すぎるくらいの状況です。

 これまで香港の議会は、中国をどう見るか、北京とどう付き合うかを含め、行政府が“親中”一辺倒にならないよう、厳しく監視する役割を果たしてきました。

 しかし今後、それはタブーになりますし、議員構成から見ても、それを実行に移す議員はいないでしょう。香港社会内部における、経済や社会問題をめぐる審議が中心になり、政治は影を潜めるでしょう。

 私の解釈では、“北京化”した香港政治、その中で行われた立法会選挙の結果が露呈させたのは、香港の脱政治化にほかなりません。より誇張した言い方をすれば、香港から政治が消えてなくなったということです。