8.住居は賃貸がいいか、持ち家がいいか?

答え「△」。家の価格が安ければ持ち家、高ければ賃貸が原則だ。

「賃貸・持ち家論争」は雑誌やテレビが好むテーマであり、繰り返し取り上げられる。但し、消費者に家を買わせることで儲かる建設・不動産業界の利害が背後にあることが多く、「賃貸派」は話題を作るためにその場に駆り出される事が多い。

 因みに、筆者はこれまで賃貸暮らしが長く、賃貸を擁護する議論にやや詳しいので、「賃貸派」の役割で声を掛けられることが時々ある。地上波の全国放送のテレビ番組で賃貸派の論者として参加したこともあるのだが、この時には、スタジオで話をしながら、「持ち家派の人は、自分とこの番組に出演するギャラが同じでも、今後不動産業者からたくさん講演依頼があるのだろうから、立場的にはあちら側が圧倒的に儲かるのだな」と思った記憶がある。我ながら情けなくなるような、せこい気づきだった。

 不動産は流動性に乏しい等の欠点があるが、投資対象となる実物の「資本」であることは間違いない。その価格には、リスク負担に対する補償となる「リスク・プレミアム」が含まれていると考えることが妥当だ。

 問題は、買うか買わないかを検討している不動産の価格が、十分なリスク・プレミアムを期待できるほど安いか、リスク・プレミアムが不十分あるいはマイナスになるほど低くなるくらい価格が高いのか、一重に価格の高低にある。

「安ければ買うのがいいし、高ければ買わない方がいい」という大原則以外に頼ることができる答えはない。

 よくあるように住宅ローンを組んで行う不動産購入の可否は、(A)キャッシュからの投資として考えた場合の損得判断と(B)住宅ローンに伴う損得判断、を総合して判断されるべきものだ。住宅ローンは、一般論としては、金融機関の儲け分だけ借り手が損をすると考えるべきコスト要因なのだが、住宅ローンに関する減税措置などが加わると「住宅ローンを借りる方が得になる」という場合もある(2021年現在、得な状況が生じている場合がある)。都度都度の状況で判断しなければならない。

 住宅購入の可否には、その住宅の将来価値の予測(基本的に上手くできると思わない方がいい)の他に、将来の家族の状況変化の予想や、その他の財産の状況など、様々な要素が関わる。

 詳しくは別の機会に論じたいと思うが、「家賃を払っても家は自分のものにならないけれども、家を買うとローンが終わると家は自分のものになる」という不動産屋がよく言う台詞だけでは、家を買った方がいい十分な理由にならないことを申し上げておく。

9.順張りがいいか、逆張りがいいか?

答え「×」。決められないものを無理に決めることは正しくない。

 投資やトレーディングにおいて(注:両者には共通点があるが、基本的には異なるものだと考えた方がいい)「順張り」的であるのがいいのか、「逆張り」的であるのがいいのか、について、つい好みで答えたくなってしまうが、正確には、時系列リターンが順相関の関係にあるか(上がった株価はその後により上がりやすい、といった具合に)、あるいは逆相関の関係にあるか(下がった株の方が次には上がりやすい)、が重要だ。

 順相関が多いか、逆相関が多いかの関係は、困ったことに一定しない。順相関が観測されて「モメンタム効果」が有効だと強調されることもあるし、逆に「リターンリバーサル」(相対的リターンの逆相関の傾向性)や「ミーン・リバージョン」(リターンの平均回帰)が有効だとされる場合もあって、金融論の専門的な論文にも両者それぞれのものが多数ある。

 二択の選択肢はお互いに排他的に成立していても、どちらがいいかは決められないので、二択で問うことが不適切だという問題もあると理解しておきたい。

10.株式に投資するのがいいか、債券に投資するのがいいか?

答え「○、△、×何れもあり」。経済・市場に対する判断による。

 大まかには、将来が、企業の利益が増えて金利が上昇するような好景気になるなら株式投資がいいし、企業の利益が増えずに金利が下落するような不景気なら債券投資がいいし、そのどちらであるかが分からないのなら、両方に分散投資するのがいいという考え方もある。

 株式と債券の両方に分散投資する伝統的なアセットアロケーションは、3番目の考え方に基づくものだ。

「相場の判断による」から「△」が正解なのか、その上で「相場の判断が難しいから」分散投資が望ましいので「×」が正解になるのかの判断は難しい。

 問題(2)の考え方から判断すると(×)が正しいような気持ちにもなる。しかし、金利がゼロからは大きく下がらないだろうという「ゼロ金利制約」を前提とする場合には、債券は(特に長期の固定利付債は)リターンが低いのに、金利上昇による値下がりのリスクばかりがあるので今は投資しない方がいいと答えがハッキリ定まるので答えは「○」であり、株式に投資するのがいいという場合もあり得る。

「市場に対する判断による」という問題の場合、「市場について判断できない場合はどうするべきか」が次の問題設定になって答えが決まる場合があるのだが、例外的に、市場について、確実ではないとしても、いくらかは判断できると思える状況があり得る。

 答えを1つに決めるなら「△」が正解なのだろうが、「△」が条件の変化によって「○」になったり「×」になったりする場合があるのが、投資の難しさで、同時に面白さでもある。