今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい金融商品」で、「国内株式」「外国株式」「投資信託」「ETF」を選択した人の割合に注目します。

 質問「今後、投資してみたい金融商品」は複数選択可で、選択肢は、国内株式、外国株式、投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(上場不動産投資信託)、国内債券、海外債券、FX(外国為替証拠金取引)、金やプラチナ地金、原油先物、その他の商品先物、金先物取引、特になしの13個です。

図:質問「国内株式」「外国株式」「投資信託」「ETF」を選択した人の割合

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 11月の調査では、「国内株式」を選択した人の割合が50.66%、「外国株式」は46.53%、「投資信託」は42.45%、「ETF」は33.36%でした。国内株式は50%前後の水準を維持、外国株式は国内株式に肉薄する状態が続いています。

 2015年以降の推移を振り返ってみると、2016年の後半に、転換点があったことがわかります。「国内株式」の低下、「外国株式」・「投資信託」、「ETF」の上昇が始まったタイミングです。きっかけは、英国のEU(欧州連合)離脱を問う国民投票とトランプ米大統領の誕生だと、考えられます。

 同年6月に行われた英国の国民投票が、英国がEUを離脱するという結果となったことを受け、民族主義・ポピュリズムが台頭した、との懸念が広がり、世界中の株価指数や景気動向に敏感なコモディティなどのリスク資産の価格が下落しました。

 こうした流れを反映し、「国内株式」、「外国株式」、「投資信託」、「ETF」を選択する投資家の割合が低下しました。しかし、同年年末から、「国内株式」を除く3つの金融商品の長期的な上昇が始まりました。

 これらの長期的な上昇の主因は、トランプ米大統領の誕生後に発生した、いわゆる「トランプラリー」です。米国株が急反発していくにつれ、「外国株式」を今後投資してみたい金融商品として選ぶ投資家の割合が上昇していきました。

 また、米国株が急反発したことは、それに連動するように設計されている、「投資信託」と「ETF」を今後投資してみたい金融商品として選ぶ投資家の割合を上昇させる、きっかけとなったと考えられます。

 米国株急反発→「外国株式」、「投資信託」、「ETF」の割合上昇、の構図は、2019年以降、さらに目立つようになりました。この間、「国内株式」の割合が低下・横ばい状態だったため、「外国株式」と「国内株式」の差は、どんどんと縮まりました。

 こうした流れを振り返ると、この数年間で、投資家の皆様の指向が「海外化」してきたことが伺えます。今後、米国株が急反発する、国内株が米国株ほど上昇しない、などの展開がみられた場合、「外国株式」が「国内株式」を上回る可能性があります。

「外国株式」が「国内株式」を上回ることは、日本の投資家の皆様の間で「海外」に目を向けることがあたり前になったことを意味すると、筆者は考えます。引き続き、「今後投資してみたい金融商品」の動向に注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2021年11月調査時点(複数回答可)

投資対象 割合 前回比
国内株式 50.66% △ 1.43%
外国株式 46.53% ▼ 0.58%
投資信託 42.45% ▼ 0.83%
ETF 33.36% ▼ 2.69%
REIT 12.55% ▼ 0.13%
国内債券 4.09% ▼ 0.68%
海外債券 6.42% ▼ 0.83%
FX(外国為替証拠金取引) 7.08% △ 0.70%
金やプラチナ地金 13.39% ▼ 0.14%
原油先物 2.48% ▼ 0.20%
その他の商品先物 1.57% ▼ 0.16%
金先物取引 1.20% ▼ 0.16%
特になし 8.07% △ 0.21%
出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域)2021年11月調査時点(複数回答可)

国名 割合 前回比
日本 32.88% △ 4.13%
アメリカ 70.62% ▼ 1.64%
ユーロ圏 6.42% ▼ 1.14%
オセアニア 4.53% △ 0.13%
中国 8.14% △ 0.71%
ブラジル 2.04% △ 0.10%
ロシア 1.46% ▼ 0.37%
インド 27.12% ▼ 8.11%
東南アジア 15.55% ▼ 0.27%
中南米(ブラジル除く) 1.20% ▼ 0.72%
東欧 1.28% ▼ 0.08%
アフリカ 4.71% ▼ 1.11%
特になし 8.03% △ 1.79%
出所:楽天DIのデータより筆者作成