日経平均の見通し

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「DIのギャップが示す押し目買い意欲」

 今回調査における日経平均見通しDIの結果は1カ月先がマイナス35.11、3カ月先はマイナス15.51となりました。両DIとも、前回調査(それぞれマイナス7.86、マイナス1.24)からマイナス幅を広げ、株安への意識を強める結果となりました。

 今回調査の実施期間のタイミングで、国内外の市場を揺さぶった新型コロナウイルスの変異株の影響を受けた格好です。

 実際に回答の内訳を見ると、1カ月先DIの弱気派が50%を超えており、グラフの見た目の印象がいつもとかなり違って見えます。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 1カ月先の見通しで弱気派の割合が50%を超えたのは、いわゆる「コロナ・ショック」で日経平均が安値をつけていた2020年の3月調査(69.71%)以来となります。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 一方の3カ月先の内訳については、弱気派の割合は37.22%と、確かに前回調査(28.05%)からは増加しているものの、先ほどの1カ月先と比べた変化は小さく、グラフの見た目も普段の調査とあまり変わっていません。

 つまり、1カ月先と3カ月先を比較すると、グラフの見た目やDIの値などでギャップが空いていることになり、個人投資家の「目先の相場は荒れるかもしれないが、中期的には下げのトレンドにはならず、いずれ落ち着くのでは?」という姿勢がうかがえます。今回の株価急落を買いの好機と捉える投資家も多いのではないかと思われます。

 株式市場は12月に入り、2021年相場もいよいよ残り1カ月を切ったわけですが、先ほども触れたように、新たに検出された新型コロナウイルスの変異株をきっかけに揺さぶられる展開が目立っています。

「オミクロン株」と名付けられたこの変異株についてはまだ判明していないことが多く、しばらくはニュースなどのヘッドラインや感染の拡大状況などに一喜一憂する展開が続くと思われるほか、今週末の10日(金)にはメジャーSQ(特別清算指数)が予定されていることもあり、需給要因によって値動きの振れ幅が大きくなることも想定されます。

 また、足元の株式市場は変異株を中心に回っているような印象ですが、11月30日の米国株の下落の背景をひもといてみると、同日の議会証言に臨んだパウエル米FRB(連邦準備制度理事会)議長の発言内容が金融引き締めに積極的と受け止められたのを売りの材料として下げ幅を広げた場面を見せており、インフレや金利動向にも敏感に反応していることにも留意する必要があります。

 14~15日にかけて開かれる米FOMC(連邦公開市場委員会)で議論される金融引き締めの是非についてはもちろん、その前の原油価格の値動きや、FOMC前に公表される米11月CPI(消費者物価指数)の結果なども注目されそうです。

 もちろん、コロナウイルスの変異株の懸念が後退すれば、株価は大きく反発していくと思われますが、米FOMCが終わる頃までは、積極的に上値をトライする動きにはなりにくいと思われます。

 その後は、年末株高や掉尾の一振りを期待した買いも出てくることも考えられますが、米FOMCが終わる12月中旬の株価水準次第でムードが左右されるほか、銘柄選別も進むことが考えられます。

 銘柄の選別色が進む相場では、景気敏感株を中心に物色されるのであれば、日米の株式市場はある程度連動して上昇していきますが、大手IT・ハイテク企業へ物色が向かうのであれば、多くのけん引役となる銘柄を抱える米国株市場と、目立った「スター銘柄」が存在しない日本株とのあいだでギャップが進みやすくなります。

 そのため、今年の年末にかけての国内株市場が上値を伸ばせるかは、銘柄の物色動向次第になるかもしれません。