為替DI:12月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 DIは「強さ」ではなく「多さ」を測ります。DIは円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけはありません。しかし、アンケートに個人投資家の相場観が正確に反映されているならば、DIの「多さ」は「強さ」に関係することになります。

「12月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券が先月末に実施した相場アンケート調査によると、個人投資家2,740人のうち48%(1,307人)が、12月のドル/円は「ドル高/円安」に動くと予想しています。先月に比べて円安見通しは5ポイント減りました。

「ドル安/円高」予想は全体の26%(720人)で、先月に比べて円高見通しは7ポイント増。26%(713人)は、「動かない(わからない)」でした。

緩和縮小は、利上げ旅への一里塚?

 FOMCは今回11月の会合で、量的緩和の規模を段階的に縮小することを発表しました。

 FRBはこれまで国債と住宅ローン関連の証券を合わせて毎月1,200億ドル(約13兆円)を超える規模で買い入れて市場に大量の資金を供給してきましたが、11月からは逆に、米国債を100億ドル、住宅ローン担保証券を50億ドルで150億ドルを毎月縮小することを決定。

 順調にいけば、2022年半ばに量的緩和が終了する見通しです。米国のコロナ感染拡大から1年8カ月を経て、FRBの金融政策は大きな転換の節目を迎えることになりました。

「緩和縮小は、利上げ旅への一里塚。」そう期待するマーケットに対して、11月のFOMCのパウエルFRB議長は、緩和縮小と利上げは「別々の金融政策」であることを改めて強調しています。インフレ上昇を認めつつも、一時的であるとの文言を声明文に残し、利上げの時期を明確にしませんでした。

 マーケットはFRBの利上げ開始を2022年6月と予想しています。パウエル議長は、インフレは一過性で、来年4月から7月には下落に転じると考えている。緩和縮小が完了した時点でインフレが落ち着いていたら、利上げを遅らせたらよい。まずは緩和縮小をスタートさせることで、パウエル議長は、利上げまでの時間を買ったといえます。

 しかし、米国のインフレ率はFRBの想定以上に高止まりしています。米商務省が11月24日に発表した10月のPCE(個人消費支出)物価指数は、前月の4.4%からさらに加速して前年比5.0%上昇。1990年11月以来、31年ぶりの高水準。インフレ圧力は高く、そして強さは増しています。

 このような状況で、FOMCメンバーの間で利上げ時期を巡って意見の対立が目立っています。デイリー・サンフランシスコ連銀総裁は「新型コロナによる経済のゆがみが解消されるのを待ってから判断したい」と利上げには慎重。一方、ブラード・セントルイス連銀総裁のように、利上げの準備を早めに整えるために緩和縮小を加速させたいと考えるメンバーもいます。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券が実施した相場アンケート調査によると、個人投資家の31%が12月のユーロ/円は「ユーロ高/円安」に動くと予想。

 ユーロ高見通しは、先月から4ポイント減りました。

ユーロ安/円高」予想は全体の27%で、先月から11ポイント増。残り42%は「動かない(わからない)」でした。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券が実施した相場アンケート調査によると、個人投資家の29%が12月の豪ドル/円は「豪ドル高/円安」に動くと予想。豪ドル高見通しは、先月から3ポイント減りました。

「豪ドル安/円高」予想は23%で、先月から8ポイント増。残り48%は「動かない(わからない)」でした。