環境活動家グレタ氏がいら立つわけ

 排出権の融通は、温室効果ガスを過剰に排出する国や企業が、少なく排出する国や企業から、権利を買い取る行為です。買い取れば、温室効果ガスを基準以上に排出できます。逆に、排出権を売却して利益を上げることもできます。

 EV(電気自動車。走行中に二酸化炭素を排出しない)を生産することで、排出権を有することができる米電気自動車大手「テスラ」は、排出権を売却し、大きな利益を得ています。一時は、本業の稼ぎを上回る利益を上げていました。

「脱炭素」がビジネス化している背景には、以下の点が挙げられます。

図:足元、「脱炭素」がビジネス化している背景

出所:筆者作成

「脱炭素」は、表向きは、温室効果ガスの排出量を削減し、温暖化を食い止める(産業革命以前の気温に近づける)こととされていますが、今のところ、ビジネス色がまだまだ強いと言わざるをえません。(それゆえ、黎明期・過渡期にあると言える)

 さらには、「脱炭素」でも、電力は欲しい、自動車で移動したい、つまり、人類に豊かな暮らしを続けたい、という欲望が残っていることが、現在の「脱炭素」を本質から遠ざけてしまっていると考えられます。

 スウェーデンの若い環境活動家がいら立ちをあらわにするのは、大人たちが過剰なレベルの豊かな暮らしを諦めず、脱炭素の本質的な議論が始まらないから、なのではないでしょうか。

 では、人類が過剰な欲望を捨てた時、何が起きるのでしょうか。「脱炭素」は、ビジネス色を薄め、排出権価格の下落を促し、本来の目的である、気温の上昇を抑える「本質」に近づくでしょう。この時、人類一人一人が、「脱炭素」を自分のこととして、認識しているでしょう。

 とはいえ、人類は、一定程度であったにせよ、豊かさを諦めること(≒生活水準を下げること)は、すぐにはできないでしょう。これこそ、数十年単位の超長期プロジェクトです。このため、2022年も、2020年、2021年と同様、「脱炭素」は黎明期・過渡期の域を脱さないと、言えるでしょう。