原油は強弱材料拮抗でレンジ相場

 以下は、温室効果ガス排出権価格の推移です。長期的に見れば、2020年11月にバイデン氏が米大統領選挙で勝利宣言をしたタイミングから、価格上昇に勢いが出たことが分かります。

図:温室効果ガス排出権先物価格 単位:ユーロ/トン

出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 価格上昇は、「脱炭素」ブームが、今まさに拡大中であることを示唆しています。排出権取引は、温室効果ガスを過剰に排出せざるを得ない企業や国が、排出量が少ない企業や国から、排出する権利を融通する(購入する)手法として、存在します。

 また、価格上昇は、権利(温室効果ガスを排出できる権利)を欲する企業や国が増えてきていることをも意味します。権利を購入することは、「脱炭素」時代を生きるための、一つの術(すべ)と言えるでしょう。

 夏場を過ぎて一時、反落したものの、先日まで行われたCOP26で、同ガスの排出削減目標が再確認されたことなどを背景に上昇に転じ、足元、史上最高値をうかがう展開となっています。

「脱炭素」が人類共通の超長期的な目標である以上、温室効果ガスの排出権価格の上昇や、「脱炭素」がもたらすさまざまな世の中への影響は、今後も長期的に続くと、考えられます。

「脱炭素」がもたらす世の中への影響の中には、「1.産油国の態度硬化」「2.米国の原油生産量の回復鈍化」「3.石炭代替のための石油需要増加」といった、原油相場に上昇圧力をかけるものもあります。

 数十年先を想定すればその限りではありませんが、目先、数カ月程度の時間軸で考えれば、「脱炭素」は、上記3つの経路から、今後も原油相場に上昇圧力をかける可能性があると、筆者は考えています。

 以下のとおり、3つの化石燃料(石炭、天然ガス、原油)価格は、下落あるいは横ばいで推移していますが、原油が石炭や天然ガスほど、下落していないのは、原油相場に「脱炭素」起因の複数の経路からの上昇圧力がかかっているためだと、筆者は考えています。

図:各種エネルギー価格の推移 2021年10月1日を100として指数化

出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 足元の原油相場の動きと、上昇・下落、両方の材料をまとめたものが、以下です。

図:WTI原油先物価格(期近 日足)の推移 単位:ドル/バレル

出所:マーケットスピードⅡより筆者抜粋