「分散投資」の意味

 予想される成長率に応じた株価の形成を一通り説明された後に、「では、理論株価で投資するとした場合に、あなたはどの銘柄に投資したいですか?」と訊かれたら、読者はどのように答えるだろうか。「やっぱり成長している方がいいから銘柄Bがいい」とか、「銘柄Cに投資する方が逆張り的で格好がいい」といった、「好み」で答える方がいるかも知れないが、実は、先の質問自体に「引っかけ」的な要素がある。

 金融論的には、1銘柄だけを選んで投資するのではなく、「A、B、Cそれぞれに分散投資する」が正解になる。3銘柄でも分散投資すると、それなりのリスク低減効果はあるはずだ。期待リターンを6%に保ったまま、1銘柄に投資するよりも小さなリスクで投資ができるので、分散投資を行わないのは「もったいない」。

 或いは、国際分散投資の文脈で、高成長な経済の国(銘柄B的な国)の株式と、マイナス成長の経済の国(銘柄C的な国)の株式の両方に投資することが、分散投資として正解になるといったケースに当てはめることもできる。低成長、あるいはマイナス成長の国の株式に投資するのは、心理的に大きな抵抗があるかも知れないが、「両方に分散投資すること」が大凡の正解であることは心得ておきたい。

 分散投資は、投資家が自分の努力でできる運用改善の手段であるところに大きな意義がある。投資の意思決定にあっては、「投資すべきは、Xか、Yか?」と迷った時に、無理に理由を作って一方を選ぶのではなく、「決定的な理由が無いのだから、できる最善の努力は分散投資だ」と考えて、XとYの両方に分散投資することが正解になる場合が多い。

 尚、分散投資によるリスクの低減は、より大きな金額を投資できるようにするためにも重要だ。例えば、ポートフォリオのリスクを小さくできれば、許容できる損失額から逆算される投資可能額を大きく出来るので、より多くのリスク・プレミアムを集めることを期待できる。