失業率は下がる、されど雇用は増えず

 8月の雇用統計で雇用者数が伸びなかった理由は、需要よりも供給サイドに問題があるからだといわれています。6月の求人件数は過去最高の1,000万件台で、すでに全米の失業者の総数を上回りました。仕事は有り余っています。ところが応募者がいません。

 理由は「良すぎる失業給付金」。働かない方が収入は多いのだから勤労意欲が湧かないのは当然といえば当然。そこで米国の地方政府が失業給付金の上乗せを廃止したところ、求人サイトの閲覧数が途端に5%もアップしました。臨時収入を使い果たしたアメリカ人が労働市場に仕事に戻ってくるはず、でした。

 ところが8月の雇用者は100万人に増えるどころか、20万人台に減ってしまいました。待遇の問題もあります。米国の雇用市場は完全な売り手市場で、提示された給料に対して求職者の半数が不満だと答えています。しかし、それよりも、もっと構造的な問題があります。

 雇用統計を見ると、雇用者が伸びない一方で、失業率は低下しています。失業率とは、労働力人口に占める失業者の割合。分母の労働力人口の縮小によって失業率が下がっているならば、国としての元気がなくなっているということになり、良いことではありません。