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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]恒大を中国政府が救済したくない5つの理由 急反発の日経平均、3万円維持できる?
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恒大への不安が低下したと解釈されて日経平均は急落後に急反発

 先週(9月21~24日)の日経平均株価は1週間で251円下がり、3万248円となりました。中国不動産大手「恒大集団」の破綻危機が高まったことを受けて欧米株が一時急落し、日経平均も9月22日に一時2万9,573円まで急落しました。

 負債総額約33兆円(日本円換算ベース)の巨大企業が破綻すると、中国経済だけでなく世界の金融市場にも大きな影響が及ぶと懸念されました。ただし、恒大集団が9月23日に迫っていた一部社債の利払いを実施したと伝わると欧米株が反発、連れて日経平均も24日は609円高の3万248円と急反発しました。

NYダウと日経平均の動き比較:2020年10月1日~2021年9月24日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 簡単に、昨年10月以降の日米株価指数の動きを振り返ります。

【1】2020年10月~2021年2月:世界株高加速

 世界景気回復期待が高まり、NYダウ・日経平均とも上昇が加速

【2】2021年3月~8月中旬:「ワニのくち」開く

 チャートを見ていただくとわかりますが、3月から8月中旬まで、NYダウが史上最高値を更新する中で日経平均の下落が続いていたため、NYダウと日経平均がワニのくちが開く動きになりました。

 新型コロナワクチンの普及率上昇で米景気が急回復する中、ワクチン普及の遅れで緊急事態宣言の発令が続く日本の景気回復が遅れていることから、ワニのくちが開く動きとなりました。

【3】2021年8月中旬~9月17日:ワニのくち閉じる

 米景気が2022年にかけて減速する見通しが出る中、ワクチン普及率が急速に上昇した日本で内需回復が期待できるとして、外国人投資家が日本株を買い戻したため、NYダウの上値が重い中で、日経平均が急反発しました。米国消費が減速する中、日本の消費が回復する期待が出たことが、米国株を少し減らして日本株を買い戻すアクションにつながりました。

 また、日本の政局の見方が変わったことも、外国人の日本株買い戻しにつながりました。菅首相が辞任することで、自民党が衆院選に大敗、政権が一段と弱体化する懸念が低下し、新たに選出される新総裁への期待で自民党支持率が回復、衆院選を乗りきった後、大型財政出動に動く期待へと変わりました。

【4】先週(9月20~24日):恒大ショックで急落後、急反発

 恒大破綻の懸念から、世界的に株が急落。ただし、23日期限の一部社債の利払いを行ったと伝わると、週末にかけて世界的に株が急反発しました。

 ただし、23日期限のドル建て社債の利払いに実施されていないものがあり、30日間の猶予期間内に支払えなければデフォルト(債務不履行)となります。恒大破綻の危機はまだ続いています。さらにその先にも、期限が到来する支払いはたくさんあります。

 年内だけで、9月23・29日、10月12・19・30日、11月8日、12月28日に合計約760億円相当(円換算ベース)の利払いが控えています。ドル建てで約700億円・人民元建てで約60億円の利払いが必要です。