現在の投資状況、ポートフォリオは?

 投資信託を中心とした運用と話す井上氏だが、現在の資産ポートフォリオを見ると、外貨、金、仮想通貨などの資産がかなりあるようだ(現金比率が高いのは最近不動産を1件売却したことによるもの)。

井上はじめ氏の資産ポートフォリオ(2020年8月現在)

注:不動産はすべて売却した場合の経費などを差し引いた純資産額として記載

 いろいろな資産に分散投資していながら、管理は毎月1回、資産状況をチェックするだけという井上氏。実は独自の管理・売却ルールに従って、投資の時間も節約している。

「僕は投資信託の積立運用にも独自の売却ルールと売却後の積み立てルールを設けています。その売却後の積み立てルールに基づき、売却して得たお金は10年分に分けて毎月の積み立て額に上乗せしています。つまりいったん売却したら5年以上、投資信託の積み立てには使わないお金もあるので、そのお金を利用して外貨、金、仮想通貨なども積み立てるようになりました。株主優待を得るために個別銘柄も購入していますが、明確に資産を増やす目的で行っているのは投資信託と不動産投資のみです」

 外貨、金、仮想通貨の積み立てを行っている理由は二つあると言う井上氏。一つは投資信託や不動産で売却した利益を銀行に預けていても増えず、現金での長期保有は「もったいないから」と言う。さらにもう一つの理由は、外貨や金や仮想通貨にも自分の資産を預けることで、「世の中の変化に興味を持つことができるから」だと言う。

 いろいろな資産に分散投資しているからこそ、毎月1回だけ資産状況をチェックするときに、世界や金融商品において何が起きたかを興味を持って調べることができるし、それらにも積み立てているおかげで、世界経済の成長が鈍い時も他の何かが高値になっていることもある。投資が自身の視野を広げ、知識を増やし、リスクを分散する役割まで果たしているのだと言う井上氏。

 ただ井上氏は、投信積立が資産形成の手段として絶対に優れていると言いたいわけではない。

「投資に詳しい人であれば、株やFX(外国為替証拠金取引)、仮想通貨の方が大きく資産を増やすチャンスがあると思っています。でも僕みたいに、投資に詳しいわけではないけど将来のためにお金を増やしておきたいという人にとっては、投資信託は素晴らしい性質を持っていると思います」

 投資信託の素晴らしい性質とは次のように「運用の自動化」が図れること。

給料が銀行に振り込まれる
銀行から証券会社に送金する
毎月自動で商品(投資信託)を積立購入する
プロが運用してくれる

「一度設定するだけで、これらが全て自動でできるというのは最高に優れている点だと思います。念のためにお伝えしておくと、僕は全ての投資信託が優れていると考えているわけではありません。世界経済に分散して投資する投資信託が、誰にでもできる資産形成の手段として優れていると思っています」

 普通の人が普通に働いて1億円を手にすることはまずない。だからこそ、投資の目標を高く持って、1億円を目指すべきなのだろうか。

「いいえ。まったく思いません。僕の場合は、出世も難しい、節約しか取りえのない平凡な能力の自分が1億円を貯められるかもしれない! という人生最大の発見をしてしまったので、試さずにはいられなかっただけなんです。人によっては5,000万円でもいいし、2,000万円でもいいと思います。ただ、お金はなくて困ることはありますが、いくらあっても困るものではありません。そういう意味では1億円を目指してもいいのだと思います。資産が増えていくにつれて、1億円というハードルはどんどん低くなっていきますよ」

 井上氏自身も元々は、1億円を達成できるのは30年先だと思っていた。

「ところが、2013年に投資した800万円が2,000万円以上になってからは、お金が増えていくスピードが早くなりました。2016年に純資産が5,000万円を超えたときは、1億円に対するハードルは信じられないくらい低くなっていました。『これから世界経済に何があっても、大震災が起きても、自分の物件が火事で燃えてしまっても、あと10年以内には1億円は達成できそうだな』って。『増やす』という経験を積み重ねることが、『資産1億円』への道だと思います」