「ポインズンピル」とは?

 敵対的買収を仕掛けられた場合、買収される側の会社は、買収を阻止するための防衛策を取ることになります。

 その一つが「ポインズンピル」と呼ばれるものです。

 これは、株主に対して無償もしくは安価で新株予約権を発行し、買収する側の会社以外の株主にそれを行使してもらうことで発行済み株式数を増やすのが目的です。

 これにより、買収する側の会社が保有する、買収される側の会社の株式の保有割合が低下し、買収を失敗に導こうとするものです。

 例えば、買収する側の会社が買収される側の会社の株式を40%保有している場合、残り60%の株式を保有している株主に対し、1株当たり新たに2株の新株予約権を発行します。

 これが全て行使されると、買収する側の会社が保有する買収される側の会社の株式の保有割合は、約18%まで低下します(100に対し40の保有が、220に対し40の保有になる)。

 買収が成功するためには、50%超の議決権を確保する必要があります。このポイズンピルが発動されると、必要な議決権を得るために確保しなければいけない株数が増加します。

 追加的な資金が必要になるので、買収成功へのハードルが上がり、結果的に買収を阻止することができる可能性が高まります。

 一方で、株式数が増加するので1株当たりの株式の価値の希薄化を招き、株価が大きく下落してしまう恐れがあります。したがって、既存の株主としてはポイズンピルの発動はあまりしてほしくないのが正直なところでしょう。

 買収される側の会社としても、株価を下落させるような施策を取った結果株主から訴訟を起こされる恐れもあるため、実際にポイズンピルが発動されるケースは少ないです。

「ホワイトナイト」とは?

 敵対的買収に対するもう一つの有名な対抗手段が「ホワイトナイト」と呼ばれるものです。買収される側の会社が「この会社になら買収されてもよい」という会社を探し、その会社に買収してもらおうとするものです。

 実際、新生銀行もホワイトナイトとなってくれる企業を探していると、連日報道されています。

 ホワイトナイトが現れた場合、もともと買収をしようとしている会社が提示している買取価格より高い金額が提示されるものと思われます。

 それは、ホワイトナイトが提示する買取価格が、もともと買収をしようとしている会社の提示額より低ければ、株主がホワイトナイトのTOBに応じることは難しいからです。

 実際、新生銀行のケースでも、9月17日時点で理論上の株価より高い株価がついています。

 SBIホールディングスがすでに保有している株はもちろんTOBの対象外ですし、大株主である預金保険機構や整理回収機構が保有している株(取得価格7,450円)は、TOBに応募すると取得価格を下回る価格で売ることになるのでTOBには応募しないと思われます。

 そうしますと、今回TOBに応募する可能性がある株のうち、実際にSBIホールディングスがTOBにより買い付ける株はそのおよそ半分になります。

 TOB発表前の株価が1,400円、買取価格が2,000円ですから、理論的には1,400円と2,000円の中間の1,700円くらいの株価が妥当株価と考えられます。

 9月17日の新生銀行株の終値は1,896円ですから、株価はホワイトナイトの登場により買取価格の引き上げが実現することへの期待が加味されているものと思われます。