【問3:答え】なぜ、米国と中国は石油の戦略備蓄を放出しているのか?

【答3】2.将来的に使わなくなることをアピールするため。
(筆者が考える、正解に近い回答です)

 戦略備蓄の放出には、さまざまな意図があるため、なぜ放出しているのかを特定することは難しいですが、今、このタイミングで、中国の戦略備蓄放出が話題になり、かつ、この数カ月間、米国の戦略備蓄の減少傾向が顕著であることを考えれば、一つの考えが浮かび上がります。

 以下の通り、米国の戦略備蓄の減少は、トランプ政権の時に始まりました。世界No1の原油生産国となったことを受け、自国での調達が十分できるとの判断とみられます。新型コロナがパンデミック(世界的な大流行)となり、危機への意識が高まった際、備蓄を積み上げる動きが見られましたが、それも短期間に終わり、再び減少に転じました。

図:米国の戦略備蓄の推移 単位:千バレル

出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータをもとに筆者作成

 今年1月、バイデン大統領が就任し、米国がパリ協定(温暖化対策の枠組み)に復帰しました。世界全体が地球環境を考える方向に再び向きはじめたことを皮切りに、春に米国が主催して40カ国の首脳が集まった「気候変動サミット」で、各国が、温室効果ガスの排出量の削減目標を強化したり、具体策について言及したりしました。

 今年に入り、日に日に、「脱炭素」のムードが高まる中、米国の戦略備蓄の減少の勢いが、増しています。そして足元、気候変動サミットで温室効果ガスの削減についての具体策を提示した中国の、戦略備蓄放出に関する報道が目立っています。米国と中国は今、時を同じくして、戦略備蓄の削減に取り組んでいるわけです。

「備蓄を持っていること」は、将来的に石油を使うことを念頭に置いていることに他なりません。逆に、「備蓄を放出すること」は、将来的に石油を使わなくなることのアピール、と言えるでしょう。この意味で、問題3の答えを、2.将来的に使わなくなることをアピールするため、としました。

 では、4問目です。