今回のサマリー

●日本株の堅調持続を判断する3ステップは(1)ショート巻き戻し、(2)新規ロング、(3)マクロ追い風
●2021年ドル/円、2012年終盤からの安倍相場、2005年の小泉相場で、この3ステップをチェック
●この観点から、菅政権退陣ラリーの短命リスク、ほどほどリスク、2022年へ継続シナリオを検討

相場急反発はどう起こる

 菅義偉首相の突然の退陣表明(2021年9月3日)を境に、日本株が急反発しています。

 半年間にわたる低迷ぶりからの一転上昇を、菅政権がいかに失望的だったかと見るのは酷でしょう。日本のマクロ環境は、菅政権存続でも、新政権発足でも、大きく変わらないと判断しています。

 新型コロナ感染第5波は既にピークアウトしつつあり、今後2~3カ月でワクチン希望者への2回接種も大方完了する見込みです。大型経済対策はどの政権でも打たれるでしょう。

 日本株の急反発は、日本のマクロ情勢の好転サプライズを映すものではなく、単に、来る総選挙での自民党勝利への観測をきっかけとする別の力学が作用しています。

 例えば、長く相場の下落・低迷トレンドが続いた後を考えましょう。そこには、その資産の(1)ショート(売り持ち、過小保有)、(2)ロング(買い持ち)、(3)ニュートラル(ポジション不保持)の3タイプの人がいます。

 ここに突然よいニュースが発生すると、リスクに一番敏感なのは損失を被りかねないショートの人。相場下落過程でショートが嵩(かさ)むほど、損失回避のための買い戻しによる相場反発は極めて強力で、加速度的に上伸しがちです。これがトレンド急展開の第1ステップです。

 ショート巻き戻し一巡後には、ショート派を締め上げてきた投機的ロングの人、既存ロングの人の利益確定売りが出やすくなります。ここでニュートラルの人、ショートを巻き戻した人、利益確定後の再参入の人が新規ロングの構築に進むと、反発はより高く、第2ステップに移ります。

 第2ステップは相場の勢いに任せて進むことが多いものですが、それがより長く遠くへ力強いトレンドを形成する第3ステップに至るには、景気や金利のマクロ面の支援が必要です。

 2022年にかけて、日本株の堅調を支えるマクロ条件は、日本国内より、グローバルに整うかもしれません。9月上中旬の第1ステップ、今後2~3カ月の第2ステップ、そして2022年の第3ステップへ、相場上昇ドライバーたちがうまくバトンをつないでいけるかを観察する必要があります。そのための準備として、過去の相場急反発の事例による思考訓練が有用でしょう。