事例(3)2005年8月~小泉郵政選挙相場

 2005年夏に小泉純一郎首相(当時)が、郵政民営化を掲げて総選挙に大勝利をしたときの、円安・株高も鮮烈でした(図3)。

図3:事例(3)2005年8月~小泉郵政選挙相場

出所:Bloomberg、田中泰輔リサーチ

 2000年のIT(情報・技術)株バブル破裂、2001年の9.11同時多発テロに対処する米国の超金融緩和が効いて、米国・世界の経済回復、ドル安に伴う新興国・資源ブームというグローバル・リスクオンの先で、「失われた20年」に苦しんだ日本もいよいよ回復かという場面でした。

 ただし、日本では、ドル安のあおりで何かと円高恐怖症がくすぶり、おのずとドル/円ショートが嵩んでいました。

 当時筆者は、FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを開始して1年ほどになり、ドル/円ショートを維持する金利コストも高くなっているため、遠からずショート勢が音を上げて巻き戻しに動き、3カ月程度で15%級のドル/円反発が起こり得るという予想を公表しましたが、市場では全くの少数派でした。

 しかし、その数週間後、小泉郵政選挙をきっかけに、ドル/円ショートの巻き戻しが起こり、ドル/円は100円台から120円台へ一気に上伸、強烈な第1ステップとなりました。その後、相場には一進一退があったものの、低金利の円を売って、高金利のドルやユーロ、あるいは新興国・資源国通貨を買う「円キャリー・トレード」が一大ブームになり、相場は第2、第3ステップに至りました。