日本株を下落させてきた悲観シナリオ

 いろいろ不安をかきたてる話が増えてきたことが、8月20日まで日経平均が下げてきた要因です。大きく分けると3つの不安があります。政治の不安、経済の不安、金融の不安です。以下は、日本株を動かしている外国人から見た解釈です。

【1】政治の不安

 内閣支持率が低下。衆院選で自民党が大敗し、政権がさらに弱体化する不安。

【2】経済の不安

 コロナ変異株の感染拡大で日本の内需回復が一段と遅れる見込み。経済再開で好調の米国景気も、変異株の感染拡大で失速する懸念。

【3】米FRB(連邦準備制度理事会)が年内にテーパリング(量的金融緩和の縮小)を開始する不安

 テーパリングを嫌気した売りで、世界的な株安となる可能性を懸念。

 一時、9月21~22日のFOMC(連邦公開市場委員会)で「テーパリングの年内開始(11月くらい)」が決定されるという不安が出ていました。ところが、8月27日にジャクソンホールで行われたパウエルFRB議長の講演で、コロナ変異株拡大への不安に対する言及があったので、テーパリングを9月にすぐ決めることはないだろうとの見方が広がっています。「年内にテーパリング開始」の見通しは変わっていませんが、9月には決めないだろうというのが現時点での市場コンセンサスです。

 ただし、こうした不透明材料が増えても、米国株は最高値圏で今のところ堅調です。日本株だけが売られてきました。

 コロナ変異株の世界的拡大が、世界景気敏感株の日本株には売り材料となりましたが、米国株にとっては「テーパリングや利上げの時期が遅れる」好材料と見られました。世界景気減速が、製造業・輸出産業の比率が高い日本株の悪材料になるのに対し、製造業の比率が低く、ITやヘルスケア産業の比率が高いディフェンシブな米国株に、資金を集めておこうとする投資家の増加につながりました。