「逆」パターンの保有数量は、「正」パターンのそれの2倍に

 しかし、「保有口数」に目を移すと、逆のパターンに大きなアドバンテージ(優位点)があることが分かります。以下の通り、逆のパターンの保有口数は、正のパターンの2倍以上になっています。

図:月1万円、積立をした時の保有数量 (2021年8月2日時点)

出所:各種情報源をもとに筆者作成

 およそ28万口を保有する逆パターンでは、基準価額がいくらになれば評価額が17万円になるのでしょうか(損の解消)。

 また、仮に、評価額30万円という目標を立てたとして、正パターン、逆パターン、それぞれ基準価額がいくらになれば、その目標を達成することができるのでしょうか。(8月で一時的に積立を中断し、保有口数が確定したと仮定)

保有数量が多い「逆」パターンの方が、評価額の回復・目標達成の難易度は低い

 以下の通り、逆パターンについては、評価額が17万円になるのは基準価額が5,992円の時、仮の目標である評価額30万円になるのは1万574円の時です。

図:評価額の目標を設定した場合の実現難易度

出所:各種情報源をもとに筆者作成

 先ほどの図「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の基準価額とその逆パターン」で見るとわかるとおり、5,992円は積立開始当初である昨年4月からの下落幅の半値弱戻し、1万574円はほぼ全値戻し、です。

 どちらも、遠くない過去に付けていた価格であるため、今からそれらの価格まで反発する難易度はさほど高くない、状況次第では十分あり得ると言えるでしょう。

 一方、正パターンの評価額が30万円になるのは、基準価額が2万2,297円の時です。これは、史上最高値水準を36%程度、上回る値です。8月2日時点の基準価額は1万6,712円と史上最高値水準ですが、この1.3倍以上にならなければならないわけです。

 正パターンと逆パターン、目標の評価額に到達するための難易度は、どちらが低いでしょうか。逆パターンでしょう。なぜ、逆パターンの方が、収益を増やしやすいのでしょうか。

 それは、価格が下落して上値余地が大きくなったため、そして価格下落時に効率的に保有数量を増やすことができたため、です。

 以前の「アドラー心理学に学ぶ、純金積立で成功するための秘訣[2]」で述べた通り、積立投資の収益を左右する要素は、保有数量と価格です。

 つまり、積立投資の収益を最大化させるためには、価格の上昇だけでは不十分なのです。積立投資の勘所は、保有数量を増やすことにある、といっても過言ではありません。