求人数は急増。雇用が大きく改善する可能性がある

 このように物価の高止まりも想定される中で、大規模な金融緩和をFRBが続けているのはなぜでしょうか? それは、FRBが物価の安定とともに、雇用の最大化という役割を担っていることにあります。そこで、雇用の状況について、米国JOLTS求人労働異動調査をみていきたいと思います。

米国JOLTS求人労働異動調査(2001年1月~2021年6月)

出所:米労働省労働統計局のデータを基にマネーブレイン作成

 この指標は労働需要を表すものですが、今年に入ってから求人数は急増し、足もとでは1,000万人を超えてきており、過去からみても大幅な労働不足の状態となっています。パウエル議長は「雇用は回復までの道のりはまだ長い」という発言をしていますが、9月上旬には失業保険に対する上乗せが切れ、州によっては7月に上乗せを打ち切っている状況を考えると、ここ数カ月で雇用が大きく改善する可能性があります。

 このため、物価が大幅に上昇し、雇用も改善しているのにもかかわらず、FRBは資産買い入れを行い、金融マーケットに巨額のマネーを供給し続けているという状況にここ数カ月でなる可能性が高いと私はみています。

 いずれにしても、物価のほうは既に大幅に上昇してきているので、テーパリングの行方は雇用情勢が鍵を握っています。9月上旬に発表の雇用統計とJOLTS求人労働異動調査の値には要注目です。