年金不安の度合いは、われわれの子供の方が大きくなる

 以下の通り、日本の人口はすでに減少期に入っています。国立社会保障・人口問題研究所の予想では、本格的な減少は2030年ごろ以降に始まり、それ以降、生産者人口(15歳から64歳)を中心に、毎年70万人から100万人程度減少するとされています。

 また、今からおよそ80年後の2100年には、6000万人を下回り、現在のほぼ半分になるとされています。

図:日本の人口推移予測

出所:国立社会保障・人口問題研究所のデータをもとに筆者作成

 こうしたことが予想される中、年金制度の「支え」の強さがどう変化するのかを知るべく、高齢者(65歳以上)1人を何人の生産人口で支えているのかについて調べました。

図:高齢者(65歳以上)1人を支える生産人口(15歳から64歳)の数 単位:人

出所:国立社会保障・人口問題研究所のデータをもとに筆者作成

 高齢者1人を支える生産人口は、1970年から2020年にかけて9.8人から2.0人に減少しました。これは単純計算で、生産人口の1人あたりの負担がおよそ5倍になったことを意味します。(高齢者1人あたりを支えるために必要な金額が変わらなかった場合)

 2020年から2070年までの見通しをもとに計算すると、高齢者1人を支える生産人口は2.0人から1.3人に減少し、単純計算で、生産人口の1人あたりの負担がおよそ1.5倍になります。

 負担の全てを生産人口が負担するわけではありませんが、給与から天引きされる社会保障費(健康保険料、厚生年金保険など)の額が、長期的に増える傾向にあることは、多くの日本国民が実感していることだと思います。

 この点に関連する、日本政府の最終支出を見ると、近年、社会保護の分野、その内訳の一つである老齢(年金・介護など)の分野の額が、多くなっていることがわかります。

 上記の通り、年金制度における数の「支え」がさらに弱くなる可能性があるため、政府の支出の額が今後さらに大きくなることが予想されます。

図:日本政府の最終支出(2018年)

出所:内閣府の資料より筆者作成

 今後、生産人口の1人あたりの負担増加と、日本全体の老齢分野の支出増大が同時進行することが予想されます。今よりも5年後、5年後よりも10年後、10年後よりも20年後…年がたてばたつほど、環境は厳しくなるとみられます。

 例えば、2021年時点で中学生・高校生の子供たちが高齢者(65歳以上)になる、2070年頃、先述の図(日本の人口推移予測)のとおり、生産人口を中心に、日本の人口は現在のおよそ3分の2に減少しているとみられます。

 また、図「高齢者(65歳以上)1人を支える生産人口(15歳から64歳)の数」のとおり、高齢者1人を支える生産人口の負担は単純計算で1.5倍に増加する可能性があります。

 こうした世代は、社会福祉関連のコスト高の波が「今にも増して」押し寄せてくるだけでなく、(可能性の域を超えませんが)「炭素税」などの環境問題起因の新しいコストの負担にも耐え忍ばなければならない世代となる可能性もあるわけです。

図:50年後を想像する

出所:筆者作成

 こうした点を考えると、「負担や負担増加による不安の度合いは、自分よりもわが子の方が大きい」→「資金の一部で家族のための運用を」→「子供に何らかの形で運用益を託す」というアイディアが浮上するのは、ごく自然のことだと、筆者は思います。