その素晴らしいセカンドライフ。「精神的安定」の優先度はどの程度でしょうか

 昨今、各種報道、インターネット等で、盛んに、現役世代で運用しておくことの重要性が述べられています。その理由のほとんどは、現役世代を終えた後に迎えるセカンドライフを充実したものにするため、です。

「充実したセカンドライフ」「豊かな老後」など、表現の仕方はさまざまですが、第二の人生を不安なく、豊かなものにするためにはお金が必要で、そのお金を現役世代の時に運用をして、年金で足りない部分を作っておきましょう、という話です。

 将来のために運用をすることで税が優遇される仕組み(iDeCo)が、こうした流れを制度的な面から後押しをしています。

 このような流れについて、筆者が日々感じていることは、「その運用は、誰のためか?」ということです。この問いへの答えを、昨今、各種報道、インターネット等で、盛んに語られていることに求めれば、ほとんどが、「自分のため」となるでしょう。果たして、運用は自分だけのためなのでしょうか。

図:その運用、だれのため?

出所:筆者作成

 運用することの最も根本的な意義は、自分の将来を充実させることでしょう。ただし、家族にその運用益を「受け継ぐ」、社会に「還元する」など、家族や社会もまた、運用の動機になり得ます。

 筆者は今後、自分以外を運用の動機とする議論が、盛んになっていくと考えています。特に「家族」については、超高齢化社会にある日本において、贈与の一般化(小口化・低年齢化)が進み、より強く意識されるようになっていくと、感じています。

 このように考えた上で、改めて「充実したセカンドライフ」「豊かな老後」を定義すると、以下のようになると筆者は考えます。

 モノ、お金、機会が満ち足りた「物理的な充足」といった従来の要素に加え、子や孫が安心できる生活を支えていることを実感できる「精神的な安定」もまた、豊かな老後を支える重要な要素と言えると思います。そしてこの「精神的な安定」を支えるのが「家族のための運用」なのです。

図:豊かな老後を支える2つの柱

出所:筆者作成