ポイント1:PER2倍を額面のまま、捉えてはいけない

 株式投資の教科書を見ると、PERの適正水準は15~20倍程度と書かれているものが多いようです。では、海運各社の株価も、その水準に達するまで株価が上昇する、と期待してよいのでしょうか? 答えはNOです。

 PERは、当期に予想される利益と同じ水準の利益が将来にわたって続いた場合、1株当たり予想当期純利益の何倍の水準まで、株価が買われているかを示すものです。

 確かに海運各社が来期以降もずっと、当期予想と同じ水準の利益を上げることができるのであれば、PERも15倍程度まで上昇してもおかしくありません。

 しかし、各社の決算説明資料に記載のとおり、足元の好調な業績はコンテナ船の運賃が高騰しているためであり、この状況が今後もずっと続くとは考えにくいのです。

 現に、決算発表後、株価は大きく上昇したとはいえ、PERはせいぜい3倍くらいにとどまっています。

 では、PER何倍の水準まで株価が上昇するのかといえば、正直申し上げて見当がつきません。なぜなら、株価は来期以降に各社があげることができるであろう利益を、マーケット参加者が予測した結果に基づき、形成されるからです。

 したがって、「さすがにPER15倍は難しいが10倍くらいには上昇するだろう」というように安易に考えない方がいいでしょう。

 なお、各社の経常利益と当期純利益を見ると、両者にほとんど差はありません。これは過去に大赤字を出した年があるため、税金を計算する際にその赤字を黒字と相殺することができるため、税金の負担が小さくなるからです。

 でも、本来であれば経常利益の35%程度は税金がかかりますから、あるべき当期純利益の額は経常利益×65%前後になります。例えば、日本郵船であれば1株当たり当期純利益は1,924円になります。

 この点を加味すると、各社の実質的なPERは表面上のものより上昇する点には注意が必要です。