20年がたち、乗り遅れた企業型DCに大きな課題

 手数料が下がり、パッシブ運用が根付いた20年を振り返るといいところばかりのようですが、一つ課題が生まれています。

 運用商品の手数料について「割安で先行していたはずの企業型DCが周回遅れ」になっているという問題が生じてしまったことです。

「2001年モデル」では割安で魅力的な商品を並べていたはずが、iDeCoやつみたてNISAを踏まえた「2021年モデル」ではそれは割高なものになってしまっています。

 iDeCoでは「新プラン」のように低コストの投資信託を並べ直し、新陳代謝を図る事例もありますが、企業型DCでは商品の入れ替えが10年以上行われていないケースが多いためです。

 入れ替えがされない理由の一つに、法律が商品の除外を厳しく制限していたことがありましたが、こちらはすでに規制緩和が実現しています(2018年5月から)。

 運用結果は自己責任といっても、そもそも高コストファンドしかラインアップしていない中で高いリターンを確保しろというのは、無理なリクエストです。例えるなら、古くて動作の重いパソコンしか用意せずに、社員に高いパフォーマンスで仕事をしろと求めるようなものです。

 特にインデックスファンドであれば、運用管理費用の低さが最終的な運用成績に直結することは明白で、適宜入れ替えていくのは会社の責任の一つであるはずです。

 しかしながら、企業の担当者の意識がまだ追いついていないことから(担当者が人事部で自らファンドの良しあしを評価する知識がないことも多い)、そもそも問題点が企業内で顕在化していないことすらあります。たとえ会社で取引がある金融機関だとしても、社員に高い手数料を払わせる理由にはなりません。

 また、社員や労働組合もこの問題を理解していないことがあります。社員の声が上がれば、会社はこれを無視できないものとなります(高コストのインデックスファンドを放置する理由は除外事務の負担以外に説明がつかない)。

 企業担当者と、従業員サイドと、双方がこの問題意識を高められれば、次の10年を見据えて、企業型DCの商品改善が進むことになるでしょう。

 iDeCoという個人が任意で加入する制度と、会社が実施する企業年金制度たる企業型DCが、商品性の優劣を比較されるというのは不思議な感覚もあります。しかし、こうした競争や比較が成り立つことこそ、「DC20年」で到達した世界なのです。

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