今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい金融商品」のうち、「国内株式」「外国株式」「投資信託」を選択した人の割合に注目します。

 当該質問は複数回答可で、選択肢は、国内株式、外国株式、投資信託、ETF、REIT(リート:上場不動産投資信託)、国内債券、海外債券、FX(外国為替証拠金取引)、金やプラチナ地金(金)、原油先物(原油)、その他の商品先物(その他の商品(コモディティ))、金先物取引(カバードワラント)、特になし、の13個です。

図:質問「今後、投資してみたい金融商品」で、「国内株式」「外国株式」「投資信託」を選択した人の割合

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 7月の調査では、「国内株式」を選択した人の割合は51.07%、「外国株式」は49.03%、「投資信託」は40.38%でした。「国内株式」と「外国株式」の差は、統計史上最も小さい2.05%となりました。(小数点第3位を四捨五入)

 2016年6月に行われた英国のEU(欧州連合)離脱を問う国民投票で、英国国民がEUを離脱することを選択したため、関わりが深い主要な先進国で強い不安感が広がり、世界中で株安が発生しました。グラフの通り、これをきっかけに、「国内株式」「外国株式」「投資信託」を選択する人の割合は、低下しました。

 しかし、同年に米大統領選に勝利したトランプ氏が、法人税減税など、株高に資する策を次々に打ち出したことで、米国株は高値を更新する展開となりました。米国株の高値更新は、日本国内における米国株ブームの火付け役となったと、考えられます。

 スマホで手軽に取引できるようになった点も加わり、この頃から「外国株式」を選択する人の割合はどんどんと上昇していきました。こうした中、「国内株式」を選択する人の割合の低下が同時進行し、以下のとおり、「国内株式」と「外国株式」を選択した人の差は、ほとんどなくなりました。(先述のとおり、7月時点で差は2.05%)

図:「国内株式」と「外国株式」を選択した人の差

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

「国内株式」を選択する人の割合が低下している理由は、「外国株式」の急速な人気化に加え、「投資信託」に関心が集まっていることが挙げられると、筆者は考えています。「投資信託」を選択する人の割合は、英国での国民投票時に低下しましたが、その後は「外国株式」と同様、「国内株式」の低下を横目に上昇しています。

 株式市場が不安定化していたり個別銘柄を探しにくい環境にあったりする時、ファンド名に分かりやすいテーマ名が記されている「投資信託」は、物色されやすくなると考えられます。例えば、株式市場が全体的に不安定化している中で、将来有望とみられるESG関連の商品を探そうとした時、ESGに関連する個別株を探すよりも、名前にESGの文字が入っているファンドを探す方が簡単です。

 また、投資信託が「金融のプロ」が運用している点は、近年急増している投資初心者の方たちが、投資の第一歩として「投資信託」を選ぶ動機になっているとみられます。ファンド名に、聞き覚えがある著名な会社の名前が含まれていれば、なおの事、「投資信託」を選択する動機が強まるでしょう。

 こうした「投資信託」をめぐる環境や、近年、投資初心者の参入が急増している点が、「国内株式」低下・「投資信託」上昇を加速させる一因になっていると、考えられます。

 目先、統計史上初めて、「国内株式」を選ぶ人の割合が「海外株式」のそれを下回る可能性が出てきています。引き続き、本稿で述べた、「国内株式」「海外株式」「投資信託」選択する人の割合の推移に、注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2021年7月調査時点 (複数回答可)

投資対象 割合 前回比
国内株式 51.07% △ 0.76%
外国株式 49.03% △ 2.69%
投資信託 40.38% ▼ 0.07%
ETF 33.68% △ 1.31%
REIT 14.83% ▼ 0.11%
国内債券 4.43% △ 0.20%
海外債券 7.06% △ 0.34%
FX(外国為替証拠金取引) 7.04% ▼ 0.28%
金やプラチナ地金 13.35% ▼ 1.96%
金先物取引 2.58% △ 0.16%
原油先物取引 1.66% △ 0.10%
その他の商品先物 1.75% ▼ 0.15%
特になし 7.70% △ 0.15%
出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2021年7月調査時点 (複数回答可)

国名 割合 前回比
日本 32.76% △ 1.97%
アメリカ 72.82% △ 0.76%
ユーロ圏 8.91% △ 0.98%
オセアニア 4.04% ▼ 0.14%
中国 14.10% ▼ 0.84%
ブラジル 2.75% △ 0.57%
ロシア 1.61% △ 0.34%
インド 23.67% △ 1.12%
東南アジア 16.56% ▼ 0.63%
中南米(ブラジル除く) 1.85% △ 0.16%
東欧 1.66% △ 0.18%
アフリカ 7.16% △ 3.07%
特になし 5.38% ▼ 1.02%
出所:楽天DIのデータより筆者作成