日経平均の見通し

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「買い場の判断に迷いか?」

 今回調査における日経平均見通しDIの結果は、1カ月先がマイナス9.57、3カ月先はマイナス0.56となりました。前回調査がそれぞれマイナス0.43、プラス3.15でしたので、両者ともにDIの値を悪化させました。とりわけ、1カ月先見通しの悪化が印象的です。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 具体的に回答の内訳グラフを見てみると、強気派の割合(20.31%)は前回調査とまったく同じ割合だったのですが、弱気派が29.88%と前回調査(20.74%)から大きく増えており、中立派から弱気派への移行がうかがえます。今回の調査期間(7月26~28日)の前週に日経平均が大きく下落していたことや、その後の戻りも限定的だったことが影響したと思われます。

 3カ月先についてもDIの値が悪化していますが、強気派と弱気派の割合がまだ拮抗(きっこう)しているといえますので、中長期的な日経平均が下向きに転じたわけではない印象です。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 ただ、弱含みの展開が目立っていますので、足元の軟調な相場局面が、「絶好の買い場」なのか、それとも「このまま下落トレンドが続いてしまうのか」で、判断に迷っている状況と考えられます。

 日経平均は8月相場に入ってからも、2万8,000円台を下回る水準でのスタートとなりました。本格化している国内の決算シーズンは、これまでのところ好業績に素直に反応して株価を上昇させる銘柄が増えている一方で、出尽くし感で売られてしまう銘柄も散見されています。

 確かに、足元の日本株は、(1)新型コロナウイルスの感染状況をはじめ、(2)秋の政局を控えた不透明感や、(3)積み上がった信用買い残の期日が迫っていること、そして、(4)7月下旬にIMF(国際通貨基金)が公表した世界経済見通しで、2021年の日本の成長率がG7の中で唯一下方修正されたことなど、懸念材料が多く、日本株を積極的に買いづらい状況です。

 国外要因についても、中国の景気やIT規制など当局の姿勢などが警戒され始めていますし、8月下旬に米ジャクソンホールで開催される経済シンポジウムで、テーパリング(資産購入の縮小)を含む米国の金融政策観測の動向も注目されています。

 こうした日本株を取り巻く環境は、「懸念材料の包囲網」とも言えますが、これだけの懸念材料がそろっていながら、何とか粘り腰を見せていますし、株価水準の割安感を指摘する見方も増えつつあります。

 夜明け前のいちばん暗い時期かどうかの見極めがまだハッキリしていないため、下振れ警戒は依然としてくすぶりますが、まずは、需給不安が後退すると思われる8月第2週あたりのタイミングで、株価の反発もしくは戻りに勢いが出てくることが焦点になりそうです。