東京2020の金メダルは、1個94,000円だった!?

以下は、今大会で授与されている、金メダルの重さと物質的価値(筆者推定)です。

図:東京2020の金メダル1個あたりの物質的価値(筆者推定)

出所:JOCの資料などをもとに筆者作成

 オリンピック憲章には、1位の選手に授与するメダルは、「少なくとも6グラムの金をメッキが施された、銀製のメダル」、と書かれています。今大会の金メダルも、それに則って作られています。

 IOCの資料によれば、純金製のメダルが送られたのは、第3回セントルイス大会、第4回ロンドン大会、第5回ストックホルム大会です。後述する「夏季五輪の金メダルのサイズ」のとおり、まだサイズ(直径)が小さかったころです。ちなみに、第1回アテネ大会では1位に銀製のメダルが送られました。

 仮に、1グラムあたりの買取価格(税込)を、金を6,990円、銀を95.0円とした場合、今回の大会の金メダル1個あたり、金が41,940円分、銀が52,250円分含まれていることとなり、合わせれば94,190円となります。

 また、データから、今回の大会のメダルのサイズは、過去最大級であることが、わかります。

図:夏季五輪の金メダルのサイズ

出所:IOC(International Olympic Committee)の資料をもとに筆者作成

 今大会の金メダルの直径は85ミリメートル(8.5センチメートル)です。この大きさは、第30回ロンドン大会、第31回リオデジャネイロ大会と同様です。先述の純金のメダルが授与された大会の直径は、3.3センチメートルから3.9センチメートルでした。

 サイズの大型化が進行している中で、同時進行している要素があります。デザインの多様化です。第9回アムステルダム大会から第27回シドニー大会まで、メダルの表面は、左手で勝利を意味するヤシの葉を抱え、右手で王冠を握りしめている女神が描かれていました。

 第28回アテネ大会からは、パナシナイコスタジアム(ギリシャのアテネにある、近代オリンピックが初めて開かれた競技場)に立つ、翼のはえた勝利の女神ニケとなりました。夏季五輪のメダルは、このデザイン変更をきっかけに、大型化しました。

 大型化により、2008年の第29回北京大会では、はじめてヒスイ(翡翠)が裏面に埋め込まれました。ヒスイには繁栄や幸福、叡智・調和などの意味があり、中国では宝石として扱われているようです。

 また、今回の大会では、裏面がメダルのデザインコンペティションで寄せられたデザインだったことから、メダルのデザインについては、表面はIOCが決め、裏面は開催国が決めるルールであると、考えられます。メダルで独自性を出せる点は、開催国としては、メリットと言えるかもしれません。

 今度は、女性選手の比率と金価格の推移を重ねて見てみます。