データで夏季五輪を解剖する。見えてきたのは「多様性」を紡いできたこと。

 以下は、夏季五輪における、選手数、参加国・地域数、競技・種目数、開催日数のデータです。近年、選手の数は全体として増加傾向(男性減少・女性大幅増加)、参加国・地域数は頭打ち、競技・種目数は増加、開催日数は横ばい、であることが分かります。

図:夏季五輪における各種データ

出所:IOC(International Olympic Committee)の資料をもとに筆者作成

 女性の選手数が大きく増加していることからは、夏季五輪において、社会が求める女性の社会進出・活躍が、実現しつつあることが伺えます。後に述べますが、今回の東京大会の女性選手の比率は過去最高となる、48.8%です。(参考までに、2018年の平昌冬季五輪の女性選手の比率はおよそ42%とみられます)

 参加国・地域数については、上図のとおり、政治的な理由でボイコット(自分たちの考えを強く主張するため、意図的に大会にでないこと)が起きた場合、一時的に減少することがあります。

1976年の第21回モントリオール大会では、アフリカの20カ国以上が、人種隔離政策を執る南アフリカと大会参加国の一つであるニュージーランドが交流があることを理由にボイコットしました。

 1980年22回モスクワ大会では、前年の旧ソ連(ソビエト連邦)のアフガニスタン侵攻を理由に、米国や米国と関りが深い国、旧ソ連と反対の姿勢を取る国、合わせて65カ国がボイコットしました。

 大会への参加は、NOC(National Olympic Committee国・地域ごとのオリンピック委員会 JOCなど)に加盟していることが求められますが、IOCが承認するNOCの数は206で、今回の東京大会には206のNOCの選手が参加する予定です。

 外務省の資料によれば、世界の国の数は196です(2021年3月12日時点)。これらから、IOCは現時点で、ほぼ全ての国にあるNOC、そしてそれ以外のおよそ10の地域に属する選手の大会への参加を認めているわけです。今後、国や地域が細分化されない限り、これ以上、参加国・地域が大幅に増加することはないと、考えられます。

 競技数・種目数は、この数回の大会で増加しています。今回の東京大会では、5競技、合計34種目が追加されました。競技は、野球・ソフトボールが復活し、空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンが新たに追加されました。

 種目では、アーチェリーや陸上、トライアスロン、卓球、水泳などの競技に男女混合の種目が、ボクシング、カヌー、自転車競技などに女子選手のみの競技が追加されました。混合や女子選手のみの種目が増えていることと、女性選手数の増加は密接な関係がありそうです。

 また、IOCは、コンピューターゲームを使った対戦をスポーツ競技である「eスポーツ(esports)」に注目していると、報じられており、今後の大会(2024年の第33回パリ大会、2028年の第34回ロサンゼルス大会、2032年の第35回ブリスベン大会など)で正式競技になる可能性もあり、今後も、競技数・種目数が増加する可能性があります。

 開催日数については、第二次世界大戦後の第13回ロンドン大会後、おおむね2週間で行われており、大きな変化がありません。参加者が増え、競技・種目数が増えても、日数はほぼ変わらず、です。この点は今後の課題なのかもしれません。

 次より、金(ゴールド)に関りが深いデータに触れます。