米国の原油生産量が回復していない点は、今後の原油相場の長期下支え材料

 以下は米国の原油生産量の推移です。米国の原油生産量は、サウジとロシアを上回る規模で、世界No1です。シェアは米国が14.8%、サウジが12.4%、ロシアが13.4%です。(2021年6月時点 筆者推定)

図:米国の原油生産量 単位:百万バレル/日量

出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータをもとに筆者作成

 その米国の原油生産量ですが、新型コロナショック後の最悪期となった2020年5月以降、目立った回復は見られません。主要な原油生産地であるテキサス州を含んだ米国南部での大寒波と停電の影響で一時的に減少した、2021年2月の一時的な減少を除けば、横ばいが続いています。

 原油価格が上昇すると、米国のシェールオイルの生産が急増するのではなかったのでしょうか? 現在は、そのような図式はありません。

 以前の「「原油相場100ドル」の願望をかなえる4つの条件」で書いた通り、米国の石油産業は、2020年3月に発生した原油相場の急落で、大きなダメージを受けました。

 そこからまだ、生産力が回復してきていません。以下のとおり、米国の原油生産量のおよそ7割を占めるシェール主要地区における生産効率を示す指標である「新規1油井あたりの原油生産量」をみると、この数カ月間、ほぼ横ばいで推移していることがわかります。

図:米シェール主要地区の新規1油井あたりの原油生産量(7地区合計)と稼働リグ数(7地区合計)

出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータをもとに筆者作成

 油井を掘る際、1本の油井を地中で枝分かれさせるなどの生産効率を上げるための措置を講じるためには、お金と時間がかかると言われています。

 こうしたお金をかけた開発活動が、明確に頭打ちになっています。稼働リグ数が増加しても、効率よく生産することができなければ、生産量の劇的な回復は望めないでしょう。

 また、米国特有の事情として、トランプ氏を真っ向から否定し、脱炭素の協力にかじを切ったバイデン政権下で、大々的に石油開発を推進することは、はばかられるとみられます。

 シェール生産者の財務面での体力の低下や、脱炭素を推進する世論の圧力などが、米国のシェール、ひいては米国全体の原油生産量の回復を難しくしていると言えそうです。