日経平均の見通し

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「先行き不透明による様子見が優勢か」

 今回調査における日経平均見通しDIの結果は、1カ月先がマイナス0.43、3カ月先はプラス3.15となりました。前回調査がそれぞれマイナス3.60、プラス5.85でしたので、1カ月先の値が改善を続け、3カ月先の値は少し後退しました。

 回答の内訳グラフで細かく見ていくと、強気派が1カ月先で20.31%、3カ月先で29.14%だったことが分かります。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 前回調査の強気派の割合は、それぞれ20.83%、32.44%でしたので、ともに割合を減少させたことになります。

 だからと言って、弱気派が増えたわけではなく、弱気派も1カ月先が20.74%(前回は24.43%)、3カ月先が25.99%(同26.59%)と割合を減らしているため、強気・弱気の減少分が中立派へと流れた格好です。

 とりわけ、1カ月先の中立派は60%近くまで拡大しており、それだけ、相場の先行きに対する方向感のつかみにくさが感じられます。

 実際に、7月相場入りとなった日経平均の株価水準は、7月6日時点で、5月の終盤から続いている、2万8,500円~2万9,300円あたりのレンジ相場の範囲内にとどまっています。

 確かに、相場の地合いが堅調と見ることもできるわけですが、その一方で、最高値を更新する場面を見せている米国株市場の流れにイマイチついていけていない場面が増えています。

 国内では、新型コロナウイルスのワクチン接種が思ったよりも早いペースで進んでいることによる、日本株の出遅れ修正や、企業業績への期待自体は維持されていると思われますが、ここにきてワクチンの供給が滞りがちになっていることや、五輪開催までカウントダウンとなった現段階において、変異型ウイルスの感染が拡大していることの方が警戒されている印象です。

 変異型ウイルスについては、感染力が強いとされているデルタ株やラムダ株などを中心に、接種が進んでいる他の国において感染が拡大していることも不安視されています。

 最近の東京都の新規感染者数は、連日で前週の同じ曜日を上回る傾向となっているほか、五輪のために来日した選手および関係者の中から感染者が出ている事例が散見されており、さらに五輪開催に向けて感染状況が悪化する事態となれば、再発出される緊急事態宣言が景気の足を引っ張ってしまう可能性があるほか、秋に実施される予定の衆院選で与党への風当たりが強まって、政治的な不透明感が強まることも想定されます。

 引き続き、コロナウイルスの感染やワクチン供給の状況、米国の景況感と金融政策との駆け引き、間もなく本格化する企業決算の動向などをにらみながら、不安と楽観ムードで動く展開となりそうです。

 また、高値圏で推移している米国株市場の動きにも注意が必要です。米国株市場は、米金利や景況感の動向に合わせて、景気敏感銘柄をはじめとするバリュー株とIT・ハイテク銘柄を中心とするグロース株とのあいだを交互に売り買いしながら株価水準を保ってきました。

 いわば、「いいところ取り」とも言える状況のため、そのかみ合わせがズレた際に、大きな調整局面が訪れる展開も有り得ます。

 そのため、株式市場では「とりあえず買える銘柄を買う」という動きがしばらく続きそうです。